2008-01-01から1年間の記事一覧

神話学の思想史

単なる神話学の学説史ならともかく、『政治の美学』のような神話学思想史はなかなか探しづらい。たとえばレヴィ=ストロースの『遠近の回想』やデュメジルの『デュメジルとの対話』のような自伝には他の思想家との交流や自分の育った背景が描かれているが、主…

男性結社と1930年代の神話学

神話に興味を持って、それをさらに深めるためにどの方向に行くか、というと色々な道があると思います。神話の伝えられている現地に行ってみる、歴史的背景や風俗を調べてみる、神話を基にした創作にハマる、むしろ自分で二次創作する、原語を勉強してみるな…

近況

ここ数週間Wikipediaから離れている。なぜかやる気が起きなくなってしまった。今となってはそのほうが気楽に思えてきた。岡沢秋さんのブログをみて、初めて『ヘイムスクリングラ』が一般書籍として流通していたことを知る。岡沢さんは第2刷以降のほうが、と…

神話の変容

誰も下の問題に答えてくれないので、ヒントを与えてお茶を濁しておきます。あえてペーガソスではなくペガサスと書いた理由……それはシェイクスピアの『ヘンリー五世』にそのような記述があるからです。βελλεροφῶνをベッレロポーンと書いとけばいい、とかそう…

問題。

ペガサスに乗っている英雄はベレロフォンである。しかしネット上にはペルセウスが乗っているという記述もある。そこで、後者を述べている出典を挙げてください(10点)。

中世ヨーロッパにおけるギリシア神話(少しの陰口)

Wikipediaのギリシア神話の項目が、「第2回秋の加筆コンクール」に参加という名目で、大幅に加筆されています。加筆の経過はとりあえずおいておくとして、現状、神話の歴史が古代から一気に19世紀後半まで飛んでしまっているのが目立つと思います。その点に…

星座は生きている

今年のはじめごろ、「星座は神話によれば動物や怪物や人物が天に上げられた姿なのだけど、そういう神話を語っていた人は、本当に天空にクマだのヘビだの巨人だのが張り付いていると考えていたのだろうか?」と考えたことがあります。 それに関して。ストア派…

知らなかったのに知っていることにしてしまっていること

記号論の大家ウンベルト・エーコによるこの洞察は、未確認動物という概念についての手がかりとなるのではないだろうか?マルコ・ポーロはサイをみてそれがユニコーンだと認識した。「認知科学ならば、彼は認知モデルによって決定されていたと言うだろう。彼…

『日本の美術 510 龍』

『日本の美術』最新刊は勝木言一郎「龍」となっています。http://www.shibundo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=9784784335107 空想・伝説上の神秘的な霊獣である龍。その雄大で霊妙なイメージは、古来、日本の多くの 芸術家たちに愛され、数々の美術品が今日ま…

竜はいつからドラゴンと訳されるようになったのか 〜わからない〜

タイトルで期待してくる人を避けるために「わからない」とつけてみました。以前も同じようなことを書きましたが、たとえばライプニッツやキルヒャーのような17世紀の知識人たちは、中国語の竜をドラゴン(ここではラテン語のdraco系の言葉すべて)に翻訳してい…

アメリカの博士論文を読む

ときどき、読みたい参考文献情報に、dissertationと書かれているのがあります。 これは「学位論文」のことで、大学の卒業論文の仲間(たとえば修士論文や博士論文)のこと。大学に提出してPh.Dのような称号をもらうための論文で、原則として提出された大学が所…

『聖アントワヌの誘惑』の元ネタ

19世紀フランスの代表的作家ギュスターヴ・フローベールによる『聖アントワヌの誘惑』といえば、砂漠の聖者アントワヌ(アントニウス)が修行中に見る幻想のなかに無数の怪物たちが現れることで有名です(この「業界」では)。日本語訳は渡辺一夫によるものが岩…

検定をつくてみた

2ちゃんねるの某スレで、<伝説の邪悪なドラゴン> 検定!なるものを見つけました。内容自体はけっこう面白いけど、さすがに自分としては物足りず。勝手に竜とドラゴン検定みたいなのを作ってみました。1発目に100点取れる人いるかな〜?

2001年のウェブ世界

2001年時点でのインデックスを利用した2001年度版Googleが、10月末までの限定で利用できるそうです。 http://www.google.com/search2001.htmlうわー昔の「幻想動物の事典」もひっかかってるよ〜w 幻想図書館さんもある……皆さんのホームページはどうですか?

奇談異聞辞典

柴田宵曲の『奇談異聞辞典』がちくま学芸文庫から発売されていましたね〜 これは単独では入手困難な『随筆辞典 奇談異聞編』が文庫化されたもので、その名のごとく江戸時代の随筆から幽霊妖怪譚のほか多くの「奇談」「異聞」を集めたものです。巨大なアンソ…

ホグフィッシュの名前

アムビゼまたはアングロという怪物がアフリカのコンゴにいるそうです。恐ろしくマイナーな幻獣なのでほとんどの方が知らないかと思いますが、キャロル・ローズ『世界の怪物・神獣辞典』や東ゆみこ(他)『世界の「神獣・モンスター」がよくわかる本』などにも…

200709メモ

ほしい本メモラヴァテルの『夜彷徨う幽霊と精霊について』の1572年の英語訳。Lewes Lavater of Ghosts and Spirits Walking by Night 1572, 1929作者: May Yardley,J. Dover Wilson出版社/メーカー: Kessinger Pub発売日: 2003/08/01メディア: ペーパーバッ…

キャロル・ローズの続き

キャロル・ローズの事典は前も書いたとおりマイナス面ばかり目立ちますが、個人的には、その出典を探る過程で何冊かの良書に出会えたということについては感謝しなければなりません。 そのうちのひとつが、一年位前にも紹介したWalter StephensのGiants in T…

イマップ・ウマッソウルサ

ちょっと元ネタをたどったりして見ていたら、いろんなことがわかるもので。私は英語版の原書しか持っていないのでわかりませんが、Imap Umassoursaという項目が『神獣』に存在するはずです。イマップ・ウマッソウルサという感じかな? ちょうど神魔精妖名辞…

無題

それから地道に資料を追加しつつ情報を訂正する作業を続けていったら資料no.が556にまでなりました(pukiwiki版では資料名も連動する予定なのです)。 別に前回500番台になってから本を更に50冊使ったというわけではなくて、資料の番号付けの都合で百科事典の…

不破有理「紅いドラゴンの行方」

不破有理さんが『紅いドラゴンの行方 : ウェールズ伝承およびアーサー王年代記におけるドラゴンの表象』という論文を発表しているのを発見。http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?file_id=14416 2008年のだから最新の論考とい…

『ツチノコの民俗学』

以前、民俗学的にツチノコを研究した論文を紹介して、その上で批判したことがあります。その論文が所収された『ツチノコの民俗学』が8月に出版されていました。 実は、私が批判したところ、微妙に訂正(?)が入ってます。ただその訂正分を読んでも論旨が混乱す…

裏でこっそり更新している「pukiwiki版幻想動物の事典」、文献番号が500を越えました。 幻想資料系サイトで500以上文献を使っているのはほとんどないのではないでしょうか?いや、それでもまだ膨大な量の資料が未使用のままというのは項目の大半がスカスカな…

やっぱりイスラーム

マイナーなものでもすぐに取り上げられることができるぐらいならいいんですが……アラビアの場合、たとえばアジャーイブ(驚異)文献のうち最も重要なアル=カズウィーニーはドイツ語抄訳があるのみだし、動物誌(キターブ・アル=ハヤワーン)で最も有名なアル=ジャ…

幻想資料系ウェブサイトが次の段階へ進むには

仰々しいタイトルですが。 あれこれ幻想系の本やウェブサイトを見てきて、明らかに欠けているなと思うところに気づいたのでとりまとめ。「幻想資料」と銘打ったけど、いちおう私のサイトが「幻想動物」系なので、それに絞って考えることにする。 率直に言っ…

それから

MySQLですか…… 大規模な神話事典を作成なさっているPandaemoniumのendさんが、Apache+PHP+MySQLを使っているとのこと。 私のほうは、この前試験的に即席で造ったPukiwiki+msearch全文検索で問題ないかな、と思ったのだけど実際に検索してみるとかなり不便だ…

CAD

はてなブックマークのほうでChicago Assyrian Dictionaryが未刊除いて全部オンラインで無料で見られるということを書いたのですが、それぞれpdfのOCRで全文検索もできてしまう。なんと便利な。 http://oi.uchicago.edu/research/pubs/catalog/cad/ シカゴ大…

結局どうなったのか?

結局pukiwikiに全部移行してみたものの、「未作成」ページの多さ&一つの文献への偏り(たとえば『妖怪事典』)が目に付いてうんざりするだけになったので、しばらくは裏で更新作業を進めつつ、表のHTMLはそのままにしておくことにしました。

データベースの変更

今、私が事典サイトを作るのに利用しているWordsworthは、オフラインではとても便利なデータベースソフトなのだが、HTMLに出力するときに問題がある。 問題の一端は、私の事典項目が1万を超えているというところにある。項目ごとにウェブページを作成するこ…

巨鳥ヒルアス

図書館で手に取った『アイルランド文学はどこからきたか』という本に、初期アイルランド文学に「ヒルアス」(Hiruath)という幻鳥が出てくるというのを見て、ぐぐってみたらヒルアスに関する論文が少なくとも2つ書かれていることを知り、それを取り寄せてみた…