2007-01-01から1年間の記事一覧

『西遊記』の竜生九子

なんと、『西遊記』にも竜生九子についての記述があるようなのです。第43回で、竜王が文字通り不肖の息子たちを紹介するセリフがある。 ただし、訳注をつけている中野美代子によれば、このリストは仮構のもので、いわゆる「竜生九子」説に対応するのは2つし…

アブラクサスやらウロボロスやら

アブラクサスやウロボロスやグリュコン(Glykon)がグノーシス主義の存在とされるのは、完全な間違いではないとしても、大きな間違いである。実際アブラクサスはグノーシス主義文献や教父の反駁文書に名前が見えるらしいしウロボロスのような蛇も文献に現れる…

誰とは言わないが某百科事典サイトでドラゴン関係の項目を立てるのはいいが不正確きわまり独自研究の道を突っ走っている某にはもう少し知識をつけて自省してもらいたい。誰かに言われたら素直に訂正し、誰かに言われたら反発して抵抗するというのも良くない…

誰か教えて

私はこれまで、ある単語を間違って「陥牢」と覚えていたようです。よく調べてみると陥牢はgoo辞書に載ってませんしgoogleでもほとんどヒットしません。しかしいったい何の誤用なのか、わかんないのです。「**におちいる」とか「**にはまる」とかいう用法…

四海龍王の姿

最近、中国の四海龍王のことを少し読み始めてみることにしました。きっかけは『しにか』1997年1月号の「水の神々」にある一つの図が気になったからです。というのも…… 右にあるのが、キャプションも同時にスキャンしたからわかると思うけど、その四海龍王(龍…

日本語のイタリック

Wikipedia日本語版のなかで、とくに欧米語からの翻訳に多いのが日本語のイタリック(斜体)である。斜体とはこういうもの、と説明しなくてもわかるか。 イタリックというのは、例えば英語だと、本文中にad libiumとかa prioriのようにラテン語やフランス語など…

とはいうものの、竜生九子は

とはいうものの、竜生九子は早くて明の時代の「発明品」だということを考えると、下のエントリでひらめいた「アジア的リアリティ」は適用しにくいようなイメージがあるんだよなあ。 たとえば北西ヨーロッパの「グリーンマン」は1920年ごろ(だったと思う)にあ…

図像的……

「美学」aestheticsの語源はギリシア語のアイステーシスAisthēsisで、「概念的認識」に対して「感性的知覚」を表す。数日前このことを知って衝撃を受けた。そして、なぜバーバラ・スタフォードのやっていることが「神経系美学」なのか、やっと理解できるよう…

『ベオウルフ』を見た

mixiに並んだレビューを見ていると、映画としての出来はそうとう悪いみたいです。監督は『ロマンシング・ストーン』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『永遠に美しく…』『フォレスト・ガンプ』『コンタクト』『キャスト・アウェイ』『ホワット・…

ウェールズ国旗

最近、ウェールズの旗もイギリスというかグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の国旗(ユニオンジャック)に入れるべき、という議論があってニュースになったそうです。そこで2ちゃんねらーがあれこれ適当にコラージュして現地に送ったところ、その…

『動物シンボル辞典』のギーヴル

の項目に、ヴィスコンティ家の始祖であるウベルディなる人物がミラノにいたギーヴルを退治して土地を開拓したとある。 ではウベルディとは誰か。探しても見つからない。しかし思わぬところにヒントが。 アリオストの『狂えるオルランド』第2歌25-26詩節 その…

ヴィスコンティ家とギーヴル

ヴィスコンティ家の紋章はギーヴルだとされることがあるが、ギーヴルは古フランス語であってイタリア語ではない。不審に思い調べてみたが、あれはビショーネ(Biscione)またはヴィーペラ(Vipera, ミラノ方言でビッサBissa)といわれているそうだ(参考:イタリ…

ケクロプスも……?

前回テーバイ神話群の分析を紹介しました。そこでレヴィストロースは「たぶんこれケクロプスとかディオニュソスとかあれとかこれとかそれとかでもできるんじゃねーの」と言っていました。 ふと、「ケクロプスって下半身蛇だよな……歩くにくいんじゃないの?」…

オイディプス神話の構造

オイディプスとスフィンクス(スピンクス)の神話は謎をはらんでいる。それ自体が謎を主題とした神話なのに加え、「神話の意味するところ」を探る人々にとってこれほど深層意識を掘り起こしてくれそうな物語もないと思われる。文化人類学の重鎮クロード・レヴ…

ギリシア神話の項目の書き方

Wikipediaにゲリュオンの項目を立てた。リンク先の項目名がゲーリュオーンとなっているのは単にWikipediaの決まりに従ったからであり、私自身は長音表記は省いていいと思っている(西洋古典叢書、岩波文庫のホメロスがそうであるように; Wikipediaで表記の問…

無題

こんなことをやっている間にも、他人はどんどん先へと進んでいっている。 世界の全てを知ることはできない、なら断片なら知れるか。断片に何を見ることができるのだろうか。見るだけではなく、他人をどのように納得させられるのだろうか。 生物をミクロコス…

ニカンドロスの『有毒生物誌』

渡辺一夫によれば表題作品の812行にあるというから、下に紹介した本を早速買って探してみた。 また、めいめいその策略(毒に対する)を心得ているのは、百足(わらじ虫)や恐ろしい雀蜂、さらにちっぽけなペンプレードーン(雀蜂の一種)と双頭のやすで、これはか…

崩壊感覚展

もう終わった展覧会に「崩壊感覚展」というのがあった。しばらく前に見にいって、思ったことがあったので、ここに書いてみた。神話関係じゃないので読み飛ばして結構ですw◎崩壊と廃墟 崩壊をテーマとした展覧会というと、安直に廃墟画や廃墟をモチーフにし…

アラトス、ニカンドロスの邦訳が!

とうとう出ましたね〜。色んな本に引用されていて存在は知っていたのですが、星座神話を扱ったアラトスの著作がようやく他言語さっぱりの日本人にも読めるようになりました。 いろんな動物を扱ったニカンドロスの『テリアカ』なども入っているようです。ニカ…

クリュセイオン・アオル

メドゥーサの切断された首からほとばしる血より生まれでた、ペガソスの兄弟クリュサオル。ヘシオドスの『神統記』によれば、その意味は「クリュセイオン・アオル」すなわち「黄金の剣」であるとされる。 そのクリュサオルと、オケアノスの娘カリロエとの間に…

ヘシオドスとグリュプス

ギリシア神話のことなら何でも載っているTheoi Projectに引用されている事典によれば、ヘシオドスがグリュプス(という単語)を最初に書き残した人らしいが、引用は残っていない。 どうもヘシオドスの断片にあるらしいが、今年ローブ古典叢書から(たぶんそ…

ペリュトンはペリティオだった

Wikipedia英語版のペリュトンの項目http://en.wikipedia.org/wiki/Perytonを何気なく覗いてみたら、こういうことが書かれていました。 ボルヘスによる最初のスペイン語版ではPerytonではなくPeritioである。ラテン語になおすとPeritiusになる。そしてPeritiu…

サーポパード

livedoorのほうのブログにコメントがあった。 「サーポパードで調べていて・・・・・・」 そんな。サーポパードSerpopard*1なんてマイナーな言葉で一般人が調べてくるなんて、いったい何があったんだ!? と重いぐぐってみた。私のブログ記事とともに、次のが見つ…

やったぜ!

とうとう自分のページがぱくられているのを発見! やったよ○○さん!! アドレスをはっておきます。 http://ivote.jp/users/?id=5861 記念に、何も手をつけません。

剣との関係

竜生九子を調べているうちに、たとえばそのうちの一種である睚眦が剣の装飾に使われていることがちょっと気になった。 「竜やドラゴンと剣の関係」である。だいたいファンタジーは「竜と剣と魔法の世界」と言われるし(普通「竜」は入らないけどw)、「竜と剣…

これはひどい

よくわかる「世界のドラゴン」事典―サラマンダー、応龍から、ナーガ、八岐大蛇まで (廣済堂文庫)作者: 「世界のドラゴン」を追究する会,ブレインナビ,ウェッジホールディングス=出版社/メーカー: 廣済堂出版発売日: 2007/10/01メディア: 文庫購入: 9人 クリ…

竜生九子の論文

北京語で書かれた論文をゲット! 中国語を習ったことがないから簡体字がそもそも読めないぜ! でも何となく理解できるんだな。漢文引用が多いからだろうか。4ページしかないようだし。 竜生九子は明代に突然現れる 文筆家による創作・捏造じゃね? 発祥伝説…

……続き

つまり、myrmecoleonさんは伝承の認識論という話題だと思っているのだけど、私が言いたかったのはメタ伝承論的視点……伝承論が使う認識論的枠組みから議論をしている、ということです。先のエントリは自分でもこの2つがごっちゃになってた。 つーか[概念]カテ…

竜生九子???

タイトルどおり。竜は九子を生むという。Wikipediaにも項目がある。私は荒俣宏の『怪物の友』で知り、後に『和漢三才図会』にあることも知った。しかし九子の説明がへんなのである。動物の説明というよりは、むしろ建築や美術などにつく装飾品の説明のような…

その土地にいるのか、遠くから見ているのか。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://d.hatena.ne.jp/m-toroia/20071007%231191784429 私のブログのエントリに反応があったのでお返事します。>博物誌類の「ローマ人が見たアジア」 >外人が見た日本 このあたり。私が取り上げたものとの違いを書いておく(…