『日本の美術 510 龍』

『日本の美術』最新刊は勝木言一郎「龍」となっています。http://www.shibundo.co.jp/cgi-bin/menu.cgi?ISBN=9784784335107

空想・伝説上の神秘的な霊獣である龍。その雄大で霊妙なイメージは、古来、日本の多くの
芸術家たちに愛され、数々の美術品が今日まで伝えられている。等伯、応挙、蕭白、探幽ら
近世の大家による優品をはじめ、仏教美術や建造物など、古代から近代にいたるまで日本美術
に表された龍の数々を掲出。さらに古代中国の龍やインドのナーガにイメージの源泉をもとめ、
東洋諸国の文化において龍がどのように伝播、混交しつつ形成されてきたかを考察する。
附論「ドラゴン」では古代オリエントやヨーロッパにおけるドラゴンのイメージをたどり、
あわせてユーラシア全体での龍を俯瞰する。

【主要目次】
■はじめに
■龍とは何か
■日本における龍
■中国における龍
■朝鮮における龍
■インドの龍
■東南アジア諸国における龍
中央アジアにおける龍
■おわりに

・図版目録
・参考文献

■附論 ドラゴン

勝木言一郎さんといえば、同じ『日本の美術』481号が迦陵頻伽を含む東アジア人面鳥の世界について書いており、この特集は私の目から見てもとても参考になる、よくできた資料でした。
で、今回の「龍」特集。実は未見なのですが、少なくとも日本とか仏教関係の内容については、信頼できるのでは……と期待しています。とくに「中央アジアにおける龍」に何が書かれているのか興味津々。以前にも書いたとおり、テュルク、モンゴル諸族やソグド系バクトリア系などにおける竜にはまだまだわからないことが多そうだからです。
しかし、先入観から申し上げますと、「ドラゴン」は正直言ってかなり地雷臭がする。東洋美術に関してはちゃんとテクストとつき合わせてイメージを参照しているのに、オリエントやヨーロッパとなるとテクストを見ずにイメージだけで語る輩が多すぎるんですよねぇ。勝木さんのこの著書がそうでないことを祈りたいですが「附論」扱いであるところから見ると、あまり期待は出来なさそう。
そういえば迦陵頻伽特集でも最後のほうに古代地中海における似たような存在についての附論がありましたが、「論」ではなくて毒にも薬にもならないような紹介でした……。