2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

フンババ(を)語源(とする)説2題

古代バビロニアの古典文学『ギルガメシュ叙事詩』に出てくる怪物フンババ(シュメール語でフワワ)は人気者だったようで、かなり後のルキアノスやマニ教文書の時代までその名前が伝わっています。それゆえいろんなフンババを語源とするのではないか説がありま…

イブン・ファドラーン

Nordica Mediaevalisによれば、イブン・ファドラーンの『ヴォルガ・ブルガール旅行記』が東洋文庫から9月に出るらしい。すでに日本語訳もあるのだが、それの改訳決定版のようだ。 ファドラーンは北欧神話の史料としても使われるが、ブルガール地方のテュルク…

龍蝕(後編)

この記事は適当に思いつくまま書き連ねていっているので、だんだんと書いているほうが混乱してきました。 ところで、以前紹介したように、カバラ思想の原典である『形成の書』(3〜6世紀)には、宇宙全体にかかわる「テリ」なる謎の語が現れています。神は宇宙…

龍蝕(中休み編)

前回の続きになりますが、宇宙を取り囲む巨大なドラゴンという考え方は朧気ながらも中央アジアやトルコのテュルク系諸民族に伝わっていたようです。Journal fo Folklore Researchのウロボロス論文ではイスラーム圏の事例がすっぽり抜け落ちていて残念なとこ…

龍蝕(前編)

日食が始まる前にこういうのを書いとけば少しはこのブログを見てくれる人が増えただろうに……と思いつつ、流れに棹差せない形で、あまり知られていない「日食と竜=ドラゴン」について少し書いてみようかと思います。そもそも天文学や占星術では、天球上、食が…

新刊・近刊情報

前の「新刊近刊情報」から3ヶ月くらい経っているのでピックアップできないのも多いとは思いますが、いちおう。あ〜、「洋書新刊紹介」なんてのもしてみたいけど、洋書版元のチェックなんてしたことないのだっ!!

まぁそうはいっても洋書でも気になる新刊に偶然めぐり合うこともあるわけで(おもにAmazonの「おすすめ」でかな……笑)。 たとえば半年前に出たのがGregory ForthのImages of the Wildman in Southeast Asia: An Anthropological Perspective(『東南アジアにお…

ウガリット神話のケルブ

墨東ブログさん*1のhttp://d.hatena.ne.jp/molice/20090711/1247268862#20090711f2ってエントリの注に「なお、カナン神話(ラス・シャムラ文書)の中には一箇所だけ「ケルブ(ケルビムの単数形)」についての言及がある」ってあるけど、これは何かの間違いか…

新刊・近刊ピックアップ

新刊情報っ!って、前からもう何ヶ月も経ってしまっていて全部ピックアップするのには時間がかかりそうなので、いくつか面白そうなのだけ。狩野博幸、湯本豪一『日本の図像神獣霊獣』 出版社ページによると「本書では、河鍋暁斎、伊藤若冲、歌川国芳らさまざ…

動物と植物の合いの子

「幻想動物の事典」のようなウェブサイトをやっていると時々問題になるのが、今回のエントリのタイトルにあるような生き物です。たとえばマンドレイク、スキタイの子羊、バーナクル。植物なんですが、動物のようにも見える厄介なやつら。 そんな厄介なやつら…

日本神話と比較神話学のウェブサイトが……

記紀を中心とした日本神話について詳細な解説と読解がなされている日本神話の御殿さんのページの「神話形式・類似神話」が試験的に復活・公開されているのに気づきました(試験公開中なので、リンクはしません)。なかなか伝統的な日本でいうと大林太良系の民…

先史世界の初期絵画表現

先史世界の初期絵画表現っていう副題の本が出ているようです。メインタイトルは『太古の光景』。 皆さんは自然史博物館やテレビ番組で「太古の光景」(たいていは恐竜たちが闊歩している)をご覧になったことがあるでしょう。本書はその「太古の光景」の19世…