2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

竜の頭と尾を追跡する8 ゾロアスター教のゴージフル

シリア語やマンダ教、マニ教文献からうかがえるように、紀元後一千年紀の半ばには、西アジアの一部で「蝕を起こす竜」の観念が広まっていた。これを踏まえて、そろそろヨーロッパの「カプト・ドラコニス」「カウダ・ドラコニス」(竜の頭、竜の尾)へと発展…

竜の頭と尾を追跡する7 マンダ教、マニ教、中世ギリシアにおけるアタリア

グノーシス主義の系統をひくイラクの小宗教であるマンダ教文書にも、シリア語のアタリアーに相当する竜が登場する。マンダ教では「マンダ教アラム語」という、シリア語と同じく東方アラム語の一種が典礼言語として用いられている。この言語では、「アタリア…

竜の頭と尾を追跡する6 シリアの竜アタリアー

ふたたび紀元後の世界に戻ろう。紀元前のメソポタミアでは、食を起こす竜についての明確な証拠は見つからなかった。しかし、この言葉自体はのちのち竜に結び付けられるようになる。 前回引用したメソポタミアの占星術書では、食に「アンタルー」という言葉が…

竜の頭と尾を追跡する5 食を起こすメソポタミアの怪物たち

さて、第3回までは紀元後数世紀の観念を見てきたが、少し時代をさかのぼってみよう。ここで出てくるのは神話的食観念のほうである。 食を起こすのが怪物だという伝承は、西アジアだと古代バビロニアにもその一部を確認することができる。古代といってもセレ…

竜の頭と尾を追跡する4 いろんな観念の区別

ここから先、混乱がないように、「食を起こす竜」の観念について、以下の三つの区別をしておく。 一つは、文字通り、日食や月食は、天空の竜によって引き起こされるというもので、とりあえずこれを「神話的食観念」とする。 もう一つは、この竜は月の交点と…