中世ヨーロッパにおけるギリシア神話(少しの陰口)

Wikipediaのギリシア神話の項目が、「第2回秋の加筆コンクール」に参加という名目で、大幅に加筆されています。加筆の経過はとりあえずおいておくとして、現状、神話の歴史が古代から一気に19世紀後半まで飛んでしまっているのが目立つと思います。その点についてメインの加筆者であるStella marisさんはコメントにおいてあれこれ言い訳なさっていますが、「参考書籍が不確実です」とあるところからして、そして「神話学は18世紀までなかった」などという発言をしているところからして、私が少し前に紹介したジャン・セズネックの『神々は死なず』をご存じないらしい。しかし、セズネックも知らずに中世・近世の神話受容を語るというのは、実のところ何も語っていないに等しい。また本書ではなくとも図書館にいけば『西洋思想大事典』の神話の項目のひとつをセズネックが担当しているのはわかるはずだし(この辞典によくあることですが、『神々は死なず』を凝縮させた項目です)、80年時点での研究水準については『世界神話大事典』でも読めます。さらにディープに最新の研究成果を知りたければJane Chanceの"Medieval Mythography"全2巻を読めばよいでしょう。セズネックは中世にも神話学という言葉を使っているし『神話大事典』では17世紀における神話と神話学の違いについても論じている。

まぁ、別にどーでもいいことですけどね……(Stella marisさんに、ギリシア神話のノートで頓珍漢な返答をされたのをいまだに恨んでますw)。

そういえば、論文タイトルを検索していたら、古代以降の神話に関するすばらしい文献一覧を見つけました。
Zum Nachleben des antiken Myths(「古代神話の、死後の生へ」)のBibliographien(書誌情報)のPDFファイルです。300ページ以上あるので気をつけてください。