神話の変容

誰も下の問題に答えてくれないので、ヒントを与えてお茶を濁しておきます。あえてペーガソスではなくペガサスと書いた理由……それはシェイクスピアの『ヘンリー五世』にそのような記述があるからです。βελλεροφῶνをベッレロポーンと書いとけばいい、とかそういうレベルの問題ではなく、神話がいかに受容され、利用され、そして利用し、変容していったか、についてどれだけ関心を持っているのか、ということが、現代に生きる私たちにとっての神話の深い理解には大切だと思うのです。

同じような、しかしずっと有名な神話に「パンドラの箱」というものがあります。しかしWikipediaを見ればわかるように、もとは箱ではなく「壺」でした。そしてこれもWikipediaを見ればわかるように、「箱」としたのはヘーシオドスよりもずっと後のこと、20世紀以上経った、人文主義エラスムスが最初らしいのです。
ペガサスと違ってパンドラについてはちゃんと一冊の本があって、それはヘーシオドスからパウル・クレーに至る「パンドラの箱」神話を追跡したパノフスキー夫妻『パンドラの匣 変貌する一神話的象徴をめぐって』。2001年の日本語訳があります。

パンドラの匣―変貌する一神話的象徴をめぐって (叢書・ウニベルシタス)

パンドラの匣―変貌する一神話的象徴をめぐって (叢書・ウニベルシタス)