インカの歴史

世界には古代史というものがいろいろとありますが、私、マヤ・アステカ・インカといった中南米の古代史についてほぼ知識ゼロの状態だったので、今年から岩波文庫でいくつかインカ関係の本が出ているので買ってみました(『インカ帝国史』『インカ皇統記』)。どちらもインカ帝国が滅亡して間もない時期に書かれた貴重な資料です。
神様についての記述はそこそこありますね。信仰、神話、宗教についても。ただ、さすがに妖怪関係の記事は多くないです。『帝国史』のほうにスーパイという「悪魔」があったのですが、これはたぶんアンデス地方民族学者たちが言うスパイと同じものなのでしょうね。

面白いのは『皇統記』のほう。まず書いてる人がケチュア語母語としていたため、たとえば「ワカ」という言葉の意味をスペイン人は自分たちの言葉で単純に考えているが、スペイン語で考えるなら「ワカ」の意味はとても広い。聖なるものは全般的にワカだし、双子のような「驚異」もワカと呼ばれる。翻訳可能性の問題。難しいですねぇ。
それと全く関係ないのですが同じく『皇統記』に載っていた話で難破して木も生えてない砂浜だけの無人島に放り出された人がいかに3年生き延びて、偶然ほかの人も流されてきてさらに1年生き延びて救出されたか、が書かれていてこれも面白かった。砂浜にあがってくる亀を殺して(たくさん上陸してくるから、とりあえずひっくり返すらしい)乾し肉に、血液を飲み物に、甲羅をいろんな用途に使ったとか、海中から石を拾ってきてそれとナイフを打ち合わせて火を得たとか。水については、雨が降るところだったから問題なかったとか。

ちょうど最近見た『パイレーツ・オブ・カリビアン』が脳裏によぎるような逸話でした。