久しぶりの更新です。
イスラーム初期の魔術と占いについての論文のアンソロジーであるEmilie Savage-Smith(ed.), 2004, Magic and Divination in Early Islam, AshgateからIntroductionの最初のほうを直訳してみました。この部分は、魔術や占い自体ではなく、それらについてこれまでどのような研究が行なわれてきたか、どのような関連本があるのかの現状を紹介しているところです。
今後も、時間があれば続きを訳してみます。

序論 イスラーム初期の魔術と占い
エミリー・サヴェージ=スミス

 魔術や占いを論じる人の数だけ、魔術や占いは様々に定義されている。すべてを取り入れようとする定義は、書く人の興味関心――文献学的、神学的、歴史学的、人類学的――を反映しがちである。さらに、現代、イスラームにおける魔術と占いを定義しようとする試みの大半はヨーロッパにおける魔術や占い実践という観点からなされたものであり、それはだいたいのところ唯一神以外の諸々の力を呼び出すもの、というものである。幽霊や降霊術、ウィッチクラフトといったヨーロッパの概念の多くはイスラームに対応する概念を持たないか、あったとしても部分的なものでしかない。ヨーロッパの諸実践を特徴づけるのに多く使われてきた二分法(高等と低俗、白と黒、教理と民衆、祈祷と呪文)を用いることも、イスラームのコンテクストからすると、相当数が妥当とは言えないものである。
 魔術や占いの特徴を探るとき、よく使われるのが非合理的と合理的とを対比させることである。しかし、あるものが今は非合理的と見なされているからといってそれがどの時代にも同じように思われていたわけではない。むしろ魔術も占いも、多くの前提を従える独自の合理性の一形式と見ることができる。それは証明された因果関係ではなくアナロジーのプロセスを基盤にしたものなのである。
 中世イスラームの著述家も現代の研究者も、シフル(Siḥr魔術)やキハーナ(Kihāna占い)という一般的な名称のもと、多彩な信仰や実践についてカテゴリー分けし、また列挙してきた*1。しかし、そうしたカテゴリー間の境界がはっきりと区分されているわけではないし、また揺れ動くものでもある。たとえばシフルというカテゴリーには驚異的なものなら何でも、たとえば優雅で精妙な詩歌、手品、植物の治癒特性、神の助けを得ること、ジンや精霊や惑星の霊を召喚すること、そして時には占星術による予言術までもが入るのだ。中世の著述家は誰もが自分なりに定義を行ないサブカテゴリーを作成している。本論の目的に鑑みて、ここでは魔術を「一般的には超自然的な力(多くはアッラーやその仲介者)に呼びかけて出来事の成り行きを変えようとするもの」、占いを「未来の出来事を予測する(または見えざるものについての情報を得る)が、必ずしもそれを変えるわけではないもの」としてみる。本論は文献紹介的なものだが、その前半ではイスラーム初期の魔術について、後半では占いについてみていくことにする。本書[Magic and Divination in Early Islam]に収められた論文もだいたい同じように配列しており、それぞれ、過去の研究を広範に参照している。本論の末尾に付した文献一覧は、魔術と占いの両方への導入的なガイドとして置かれていて、多くの現代の学術的リソースや方法論も含めてある。

リソースと方法論
 全てではないにしても、魔術や占い実践について私たちが使える原典の大半は後半(12世紀以降)になってからのものであり、手順や技法がよく定められており、かなり複雑になっているのも多くなっている。そこからイスラーム最初期における実践や信仰の内実を見定めていくのは困難なことだし、非常に思弁的になってしまう。
 イスラーム以前の実践がムスリム社会に取り入れられていた初期イスラームについては、私たちは『ハディース』や古い辞書類、年代記、そして魔術や占いに特化したわけではない文献に頼らざるをえない。しかしこの分野に手をつけた歴史学者の多くは、後半の魔術や占いについてのフォーマルな論考にばかり着目しており、それに対し前半(8世紀から11世紀前半)については私たちは運のいいことにアル=キンディー(870年ごろ没)やアブー・マシャル(893年ごろ没)が書いた関連性のある占星術論考の諸版や翻訳、また、いわゆる『ピカトリクス』という魔術集成を手にすることができる。しかしながら、イスラーム初期の魔術や占いに専念した総合的研究は相対的に数が少ない。ジョン・ラモローの価値ある業績が例外だ *2。しかし11世紀以降に書かれた資料に基づいた研究のなかに、前半の時代に関わる洞察を見つけることができる。
 この分野について書誌学者の仕事は十分ではないが、トゥフィク・ファハドの業績のなかには占い(占星術を除く)についてのものがある*3。魔術や占いというトピックはカール・ブロッケルマンによる複数巻の『アラビア文献史』(Carl Brockelmann, Geschichte der arabischen Litteratur 1889-1949)では折に触れて出てくるにすぎず、フアット・セズギンがブロッケルマンを引き継ぎ補完した仕事においては(初期占星術と天体気象学を除き)完璧に無視されている*4。魔術全般と占星術(しかし別形態の占いは含まない)については、マンフレート・ウルマンの『イスラームの自然諸学、オカルト諸学』(Manfred Ullmann, Die Natur- und Geheimwissenschaften im Islam)*5を基本的な書誌情報の出発点とすべきだろう。
 魔術や占いに関わる中世の資料について十全な文献一覧があるわけではないが、この分野は『イスラーム百科事典』(Encyclopaedia of Islam一部はここでも引用する)の中でも関連がある多くの項目や、学術雑誌の二つの特集号で論じられている。具体的には、『オリエント研究紀要』44巻(Bulletin d’études orientales, 1992)は「オカルト諸学とイスラーム」(Sciences occultes et Islam)という特集を組み、『アラブ研究誌』13巻(Quaderni di studi arabi, 1995)はアン・ルゴーが編集した「イエメンの占い魔術の力」(Divination magie pouvoirs au Yémen)という特集を組んでいる。この二つの特集号の中から以下に述べる主題のために選び出せる研究は数少ないが、それでも全体を通読しておくべきだろう。
 関係のある写本は図書館のなかに無数にあるが、そのうち公刊されたり研究されたりしたものは少ないし、目録化されていないものさえもある。たとえばゲニザ出土の文献のように新たに出てきた資料も次第に利用可能になってきてはいるが、いまだ魔術や占いについての歴史学者により広く用いられてきてはいない*6。工芸品や物質的遺物も潜在的にはネタになりうるし、イスラームにおける護符の大きなコレクションも過去2世紀のあいだにまとめられてきているが、少しは説明のついた出版物があるにしても、相対的には歴史的分析はほとんどなされていない*7
 どちらにしても、工芸品や物質的遺物については解釈の問題がある。たとえばそれが何を意図して使われたのかを私たちは知っているのだろうか? そうだとして、それをどのように解釈すべきなのか? 文献資料には書かれていない工芸品があり(例えば魔術ボウル)、現存する文書と工芸品の間には釣り合いがとれていないところもある。たとえば「石の書」というのがあって、精緻な魔術的形象や呪文を貴石の類に彫り込むための指南がされているのだが、現代の書き手たちは、それがどう使われたのかについての疑問を投げかけている。そのデザインは宝石に彫るには精緻にすぎるし、また現存する無数の宝石や封印用の石に描かれたデザインは石の書とどこも対応していない。おそらく「石の書」は、楽しんで読まれたかもしれないが護符制作者にはほとんど使われなかったというジャンルの一例なのだろう。こうした問題点を書き留めておかなければならない。
 魔術や占い用のネタには様々な観点からのアプローチがある。文字で書かれた論考に対しては、一般的に書誌学的・テクスト分析的なアプローチがなされる。マンフレート・ウルマンに代表されるのは伝記=書誌学的アプローチだが、トゥフィク・ファハドは文献学的関心と写本の引用を組み合わせている*8。アル=キンディーやアブー・マシャルの占星術論考の最近のエディションや翻訳はテクスト分析の優れた事例だが、魔術文書のほうはそれに匹敵する扱いを受けていない。工芸品の多くは碑文研究や人類学的パースペクティヴによって論じられている。ルドヴィク・カルスによる印章や護符の目録では詳細な碑文研究がなされているが、歴史的コンテクストの分析は相対的に少ない*9。現代の護符や魔術器具を大規模に研究したクリスとクリス=ハインリヒは、人類学的アプローチを主軸に置いたもののの一例である*10。現在のところ、イスラームの魔術や占いの歴史学者は文化的/社会的、修辞的アプローチ――魔術と宗教の有効性は同じようなものと見なされ、記号論や機能主義に焦点が当てられる――(近年のヨーロッパ魔術史で好まれている)には傾いていない。厳密な人類学的アプローチも宗教と魔術の境を曖昧にするものであるが、それに加えて過去を見る方向で推論する傾向にあり、現在行われている諸実践が本質的には古代や中世から変化していないままだと想定している。こうすることのリスクは、たとえば最初期の魔術ボウルに見える治癒目的の記銘が、人類学者がカップの現代の用法に割り当ててきた機能である「怖れのカップ」とは根本的に矛盾するという事実に明らかである。同じように、この主題に対して言語学的視野と人類学的視野を組み合わせた構造主義的アプローチに全面的に依拠するのも難しい*11。それでもヨーゼフ・ヘニンガーは見事に人類学的アプローチとテクスト分析を組み合わせ、ジン信仰についての重要な研究を成し遂げており(本書の第1章)、インドの魔法使い(conjurer)についての近年の研究も、かつての諸実践を分析するのに使えるかもしれない考察を提示している*12。筆者による研究は、工芸品と文書の両方を使い、魔術器具やある種の護符、関連する魔除けのデザインと用法を分析するものである*13
 いくつかの信仰や実践の起源やその形式的言説の性質に注目がなされているにしても、歴史学者はなお答えが出されていない大きな問いに直面している。それは、どれだけ魔術や占いが広まっているのか、どのように見定めるのか、なぜ多くの人々がそれを実践していたのか(実際にしていたとして)、という問いである。



魔術

 初期イスラーム世界の魔術の多くは本来が守護的なものであり、神[アッラー]からの全般的な恩恵を祈るものだった。時には、神が他の存在からの力――邪視、様々な悪魔(シャヤーティーン)や精霊(ジン、「化ける」超自然的存在で、『クルアーン』に既に確認できる)を妨げるのを特別に求めることもあった。無数の精霊を含む悪の存在が存在とするという前提は先イスラーム社会から継承されてきたもので、それにともない多くの対抗手段も受け継がれてきていたのだ。
 ほぼ一世紀前のエドモン・ドゥッテによる研究は、イスラームの魔術実践への全般的なガイドとして今でも有用である*14。ドロシー・ピーロウによる近年の研究も、13世紀の文書に基づいているものの、非常に有用である*15。また使えるのがイブン・ハルドゥーン(1382没)の『歴史序説』のなかの魔術についての章である。彼はこの件についての「歴史」を叙述している*16。また『イスラーム百科事典』の項目「シフル」や「シーミヤー」も使える*17。マイケル・ドルズは、医術のコンテクストにおける魔術に関わる章において(本書の第3章)、イブン・アッ=ナディームによる10世紀終わりの歴史的記述を提示しており、またイブン・ハルドゥーンによる治癒魔術の評価についての要約も行なっている。

イスラーム期の影響とその残存
 先イスラーム期および初期イスラームにおける精霊ジンの信仰についての基本的な研究はヨーゼフ・ヘニンガーによるものである(本書第1章)。ほかに使えるのは、より最近のトゥフィク・ファハドによる「イスラームにおける天使、精霊、ジン」や*18。中東の土着な「邪視」信仰とそのイスラーム社会における役割についての総合的研究は行なわれていないが、邪悪な(多くは意識的ではない)眼差しの行為に対して行われる予防的手段については文献で多くの参照がなされている。邪視についてのもっとも包括的で多文化を網羅した研究は、今のところ、ジークフリート・ゼリクマンによるものである*19
 古代末期のヘルメス主義の伝統は、この世界と神的世界との密な関係性というか「共感」を重視するものだが、アラビア語による形式的な魔術・占い・錬金術の著作に多大な影響を及ぼしている*20。たとえばその影響は、「純粋兄弟団」(Ikhwān al-Ṣafā’)の手になる有名な論考集成に顕著なものだ*21。フランシス・ペーターズ(本書第2章)は、古代末期におけるこの秘教主義の勃興と、ハッラーンのサビア人たちがそれを初期イスラームに伝承したときの役割について論じている*22。アレクザンダー・フォーダーは13世紀の論文というコンテクストにおけるアラビア魔術へのユダヤ的影響を論究している(本書第4章)。先イスラーム魔術信仰の全体的な背景については、マイケル・モロニーの『イスラーム征服後のイラク』中の「異教徒とグノーシス主義者」が非常に有用である*23アラム語での魔術実践については、ジョゼフ・ナヴェとシャーウル・シャケドによる業績が何にも代えがたい*24。多様な影響を解きほぐすことのむずかしさについては、ペーター・ヨースの論文を参照のこと*25
イスラーム的な信仰や実践の多くは、隆盛しつつあったイスラーム文化へと吸収されていった。先イスラーム的な魔術的図像でライオンや蛇、サソリを象ったものを、何種類かの魔術的工芸品、たとえば護符や魔術=医術的なボウルに見て取ることができるわけだ。突然死にも関心が寄せられていた(邪視に関連しているとされた)――最初期の護符にみられる象徴群の連なり(サソリ/蛇/狂犬)を説明することにおいては、すべてが突然死の予兆として解釈されうるものだった。古典古代に由来する占星術的な図像には十二宮や七惑星の象徴的表現などがあるが、それもまた魔除けのデザインに貢献していた。
 動植物や鉱物のオカルトな[隠された]特性を用いることは、古代末期以来の実践を受け継いだものだった。このトピックについてはすぐにアラビア語ジャンルが全体として発展した。普通このジャンルはハワース文献(khawāṣṣ literature)と呼ばれて画、これは「特殊属性」を意味する語khāṣṣaの複数形によるものだった*26。基本的な前提となっていたのは、万物には本来的に隠されたオカルトな特性があり、それを活性化することができる、そのなかには他のものと互換的なものもあれば反発的なものもある、という考えだった。そうした特性を認識し、利用することにより、病気は治るだろうし、幸運も舞い込むだろう、というのである。医術的な材料のオカルト特性(khawāṣṣ al-adwiya)というトピックは好まれていたが、ハワース文献のなかで最も広まった独特の形式はというとおそらく「石の書」だろう。これは石や鉱物の魔術的な効力や使い方を述べたものである。早い例は、10世紀にエルサレムムハンマド・イブン・アフマド・アッ=タミーミーの書いた魔術=医術的な薬物集成だろう。石のハワースに関する章はユッタ・シェーンフェルトが編纂し翻訳したものがある*27。それより後の論考類は、輪にはめる宝石に彫り込むデザインの図が入っていることが多かった。これは野生動物を捕獲したり、誰かを呪文から解放したり、愛を勝ち得たり、等々の助けとして用いられた*28。この種の魔術にはふつう祈祷や召喚はなかった。それは、そうしたものを作る素材や刻み込まれた象徴だけでも十分だとされていたからである。

*1:Toufic Fahd, “Siḥr”, in The Encyclopaedia of Islam, 2nd ed., 11 vols. [以下EI2](Leiden, 1960-2002), IX, 567-571; idem, ”Kihāna”, in EI2, V, 99-101.

*2:John C. Lamoreaux, The Early Muslim Tradition of Dream Interpretation (Albany, 2002).

*3:Toufic Fahd, La divination arabe: études religieuses, sociologiques et folkloriques sur le milieu natif de l’Islam (Strassbourg and Leiden, 1966). 占星術は、他の面では基本的なこの研究に入っていない。

*4:Fuat Sezgin, Geschichte des arabischen Schrifttums, VII: Astrologie-Meteorologie und Verwandtes bis ca. 430 H. (Leiden, 1979), 1038年以前の占星術については1-199、同時代の天体気象学については302-335。

*5:Manfred Ullman, Die Natur- und Geheimwissenschaften im Islam (Leiden, 1972; Handbuch der Orientalistik, I.vi.2), 271-358, 369-426.

*6:Peter Schäfer and Shaul Shaked, eds., Magische Texte aus der Kairoer Geniza, 3 vols. (Tübingen, 1994-1999). この研究には優れた文献一覧がある。Bernard R. Goldstein and David Pingree. “Horoscopes from the Cairo Geniza”, Journal of Near Eastern Studies 36 (1977), 113-144も参照。

*7:おそらく一つにまとまった最大のコレクションはWellcome Collection of Amuletsだろう。今はオックスフォードのピット・リヴァーズ美術館にあり、中東の護符資料についての二つの大規模なコレクション――トゥフィク・カナアンとウィニフレッド・ブラックによるもの――と、ヘンリー・ヒルドバラによるもので構成されている。大半はイスラーム的なものだ。未刊行の論文を除けば、コレクションのどれも目録化されてないし研究もされていない。Marie-Claire Bakker, Amuletic Jewellery in the Middle East: the Hildburgh Collection of North American Amulets in the Pitt Rivers Museum, 未刊行の博士論文、オックスフォード大学、1996参照。アレクザンダー・フォーダーは、魔術的護符や道具の巨大な個人コレクションについて小さな複製と説明を刊行している。Alexander Fodor, “Amulets from the Islamic World: Catalogue of the Exhibition held in Budapest, 1988”, The Arabist [Budapest Studies in Arabic, II] (Budapest, 1990)参照。

*8:Richard Lemay, “L’Islam historique et les sciences occultes”, Bulletin d’études orientales 44 (1992), 19-32も参照。

*9:Ludvik Kalus, Bibliothèque Nationale, Département des Monnaies, Médailles et Antiques: Catalogue des cachets, bulles et talismans islamiques (Paris, 1981); idem, Catalogue of Islamic Seals and Talismans: Ashmolean Museum, Oxford (Oxford, 1987).

*10:Rudolf Kriss and Hubert Kriss-Heinrich, Volksglaube im Bereich des Islam, II: Amulette, Zauberformeln und Beschwörungen (Wiesbaden, 1962).

*11:イスラームの土占いについての構造人類学的アプローチに発生する史的・論理的問題の批判については、Marion B. Smith, “The Nature of Islamic Geomancy with a Critique of a Structuralist’s Approach”, Studia Islamica, 49 (1979), 5-38参照。

*12:たとえばLee Siegel, Net of Magic: Wonders and Deceptions in India (Chicago, 1991); Ariel Glucklich, The End of Magic (Oxford, 1997)参照。後者は魔術経験について有用な定義をしている。「単純だが精密な感覚の知覚方法により、世界のすべての物事が相互に関係しているのだということへの気付き」(p. 12)。

*13:Emilie Savage-Smith, “Magic and Islam”, in Francis Maddison and Emilie Savage-Smith, Science, Tools & Magic (London and Oxford, 1997; Khalili Collections of Islamic Art, 12), I, 9-148. この研究はKhalili Collections of Islamic Art所蔵のものを中心にしているが、分析で用いられる比較材料はより広い範囲を包括している。

*14:Edomond doutté, Magie et religion dans l'Afrique du Nord (Algiers, 1908; repr. Paris, 1984).

*15:Dorothee Anna Marie Pielow, Die Quellen der Weisheit. Die arabische Magic im Spiegel des Uṣūl al-Ḥikma von Aḥmad ʻAlī al-Būnī (Hildesheim, 1995).

*16:Ibn Khaldūn, The Muqaddimah: an Introduction to History, trans. Franz Rosenthal, 3 vols. (Princeton, 1958), III, 156-227.[和訳、岩波文庫版第3巻386-473頁]

*17:注1参照。Duncan Black MacDonald and Toufic Fahd, "Sīmiyā'", in EI2, IX, 612-613も。

*18:Toufic Fahd, "Anges, démons et djinnes en Islam" in nies, anges et démons: Égypte, Babylone, Israël, Islam, Peuples altaïques, India, Birmanie, Asie du sud-est, Tibet, Chine, ed. Dimitri Meeks et al. (Paris, 1971; Sources orientales, 8), 153-214.)))『イスラーム百科事典』内の関係ある項目である((Pertev N. Boratav et al., "Djinn", in EI2, II, 546-550; Toufic Fahd and Daniel Gimaret, "Shayṭān", in EI2, IX, 406-409. より後の時代になってからの展開については、1860年に最初の記録がある、北東アフリカにおける精霊(精霊でもジンでもない)カルトについての項目"Zār" (Alain Rouaud and Riziana Battain) in EI2, XI, 455-457; Janice Boddy, Wombs and Aliens Spirits: Women, Men, and the Zār Cult in northern Sudan (Madison ,1989)参照。

*19:Siegfried Seligmann, Die Zauberkraft des Auges und des Berufen. Ein Kapitel aus der Geschichte des Aberglauben (Hamburg, 1922); Doutté, Magie et religion dans l'Afrique du Nord, 317-327; Philippe Marçais, "ʻAyn", in EI2, I, 786も参照。

*20:Garth fowden, The Egyptian Hermes: a Historical Approach to the Late Pagan Mind (Princeton, 1993)参照。ギリシア・ローマ時代の魔術全般については、Christopher A. Faraone and Dirk Obbink, Magika Hiera: Ancietn Greek Magic and Religion (Oxford, 1991); John G. gager, Curse Tablets and Binding Spells from the Ancient World (New York and Oxford, 1992); Fritz Graf, Magic in the Ancient World (Cambridge MA, 1997); Bengt Ankarloo and Stuart Clark, eds., Witchcraft and Magic in Europe: Ancient Greece and Rome (London, 1999)参照。ビザンツコプトの魔術については、Henry Maguire, ed., Byzantine Magic (Washington CD, and Cambridge MA, 1995); Marvin Meyer and Richard Smith, eds., Ancient Christian Magic: Coptic Texts of Ritual Power (San Francisco, 1994)参照。

*21:たとえばSeyyed Hossein Nasr, An Introduction to Islamic Cosmological Doctrines: Conceptions of Nature and Methods Used for its Study by the Ikhwān al-Ṣafā’, al-Bīrūnī, and Ibn Sīnā (Cambridge MA, 1964)参照。

*22:“Ṣābi’a” (Toufic Fahd), in EI2, VIII中の“The Ṣābi’at Ḥarrān”, 675-675も参照。

*23:Michael G. Morony, Iraq after the Muslim Conquest (Princeton, 1984), 384-430. Wolfhart P. Heinrichs, “Sadjʻ”, in EI2, VIII, 732-738も参照。先イスラーム期のアラビア語における魔術詠唱の用法に関するものである

*24:Joseph Naveh and Shaul Shaked, Amulets and Magic Bowls (Jerusalem, 1985; 2nd rev. ed. 1987), idem, Magic Spells and Formulae: Aramaic Incantations of Late Antiquity (Jerusalem, 1993).

*25:N. Peter Joosse, “An Example of Medieval Arabic Pseudo-Hermetism: the Tale of Salāmān and Absāl”, Journal of Semitic Studies 38 (1993), 279-293.

*26:Manfred Ullmann, “Khāṣṣa”, in EI2, IV, 1097-1098参照。『クルアーン』の詩節や語句にもオカルトな特性(khawāṣṣ)があると言われたが、これについてはToufic Fahd, “Khawāṣṣ al-ḳur’ān” in EI2, IV, 1133-1134参照。

*27:Jutta Schönfeld, Über die Steine: das 14. Kapitel aus dem „Kitāb al-Muršid“ des Muḥammad ibn Aḥmad at-Tamīmī, nach dem Pariser Manuskript herausgegeben, übersetzt und kommentiert (Freiburg, 1976).

*28:このジャンルの一例としては、A.F.L. Beeston, “An Arabic Hermetic Manuscript”, The Bodleian Library Record 7 (1962), 11-23参照。