今度は古書店街に行ってみる

今度は、グランバザールイスタンブール大学のあいだにある古書店街に行ってみた。「古書」というのは『イスタンブールに暮らす』という本にあった表現だが、実際に行ってみると多くは新刊書店だった。大学に近いので、いわゆる学術書が多い。

ときどきトルコ語で話しかけられてうまく話せないのがもどかしい。「テュルク・ミトロジシ」(トルコ、というか日本語的には正確にはテュルク神話)の本がほしいと言っても出てくるのがユナン・ミトロジシ(ギリシア神話)だったりして、違うことを説明するのが難しい。それでも知っているトルコ人著者の本をいくつか買ってみた。エメル・エシンのやつ。エシンは今知ったがフランスで書いた博士論文がテュルクのドラゴンについて、らしい。私が読んだことがある論文のうちの一つもテュルクのドラゴンアーチについてのだったからその延長上ということか。

Emel Esin, 2003, Orta Asya'dan Osmanlıya Türk sanatında ikonografik motifler. (『中央アジアからオスマン時代に至るテュルク芸術における図像的モチーフ』)
Id., 2001, Türk kosmolojisine giriş (Toplu Eserler 1). (『テュルク宇宙論入門 論文集1』)

これを買ったのは、上のほうは図像がたくさんで、索引の「竜」のところを見ると多く言及されていたから。下のほうは、少し前に買ったテュルク神話本の参考文献にあったから。
今帰って読んでみて気づいたのだがどちらも死後編集された論文集である。そしてまた気づいたが、上のほうにはズバリ「エヴレン セルジューク朝芸術のエヴレン描写のテュルク図像での起源」という論文が! エヴレンとは、エシンが推測するところの、昔のテュルクにおける宇宙論的ドラゴン。少し前に読みたい論文とおもってチェックしていた奴だった。運よく入っていた。また、その次に並んでいる論文にもまたエジュデル(トルコ語でいうドラゴン)の名がタイトルにあったので運がいいなあと思ってよく見てみたら、私が読んだことのあるエシン英文論文"The cosmic symbolism of the dracontine arch and apotrapaic mask in Turkish symbolism"を誰かがトルコ語に翻訳した奴だった。日本にコピーをおいてきたのでしばらくは見れないなあと思っていたけど、これまた運がいい。他にもいくつか日本で読んだことのあるエシン論文(英語)のトルコ語訳が入っていた。

あと、これとは別にBen Mehmed Siyah Kalem, İnsanlar ve Cinlerin Ustası(我、メフメド・スィヤフ・カレム、人間と妖怪[ジン]の専門家)という2004年の展覧会カタログも(やたら高かったが)買った。これは親切なことに英語とトルコ語対訳である。このスィヤフ・カレム(「黒筆」)という人はけっこう面白い。日本でいう「鬼」みたいなのをたくさん書いている。でも正体不明。帰国したらじっくりと紹介してみたい。

また、Metin and 40 days 40 nightsという細密画の本があって、そのうちの1ページに、イスラーム圏では珍しいであろう多頭ドラゴンの絵画があったんだが、その1ページのためだけに1万円くらい出すわけにもいかず、諦めた。