1102436503**広がる、つながるその2*

 前回は少しばかり言語学歴史学っぽかったので今度は民俗学的に

 たとえばアフガニスタンのアルマスティAlmastiの胸(乳)はあまりに長くて、それを肩越しにかけているそうです。
 東タジキスタンの同名のアルマスティは、なんと一つ眼で巨大な胸を持っているとか。
 また、カーブルのアールĀlの足はかかととつま先が逆になっているそうです。

 水木しげるの妖怪本になじんでる人ならすぐピンとくるでしょうけど、「長すぎる乳」といえば八丈島にテッチという老婆の妖怪がいます。テッチも乳を肩にかけていますが、全身かさぶたというトラウマな外見をしてます。さらに西ヨーロッパにも同じような妖精がいるらしく、ThompsonのMotif-indexでは
F232.2.妖精たちには、肩越しにその乳を投げられるほど十分に長い乳がある。
F441.2.1.2.樹木の女精の乳が非常に長いので、彼女の肩越しにそれを投げることができる。
F460.1.2.山女の乳が非常に長いので、彼女の肩越しにそれを投げることができる。
と、ちゃんとモチーフが存在したりしています。

 一つ眼、というのは言うまでもなくアリマスポイ人を想起させる特徴です。

 逆になってる足といえばインドのチュレルが思い出されますが、これも女の幽霊だったりします(しかも妊娠中・出産中に死んだもの)。


 どの特徴にしても、言語学的にその伝播が強力に実証できるという性質のものではないですし、むしろ点から点への二次元的な伝播ではなく、面から面への三次元的な文化モチーフの共有という視点から考えたほうがわかりやすいと思います。そのような問題を科学的・実証的なところにまで持っていくためにはまだまだ時間がかかりそうですが、とりあえずは「アル」から広がる「現象的」な特徴をメモ程度に書き残しておきます。