口裂け女

 「口裂け女」韓国に上陸 インターネットで風説広まる? 怖がる児童続出 教師打ち消し躍起

 2日弱ぐらいネットから離れていたら、いつのまにかこんな面白そうな話題が出回っていました。早速未来検索livedoorで"口裂け女"と検索してみると、すでに59件ものblogが口裂け女について扱っている模様。

 口裂け女
 日本民話の会、学校の怪談編集委員会学校の怪談大事典』によると、1979年ごろを中心に話題になった妖怪。
・大きな白いマスクをしていて、通りかかった人に「私、きれい?」と聞く(余計なお世話だ)。「ブス」と言ったら襲われ、「きれい」と言うとマスクを外し、耳まで裂けた真っ赤な口を露出。鎌を持って追いかけてくる。
・白いズボンに赤いコートを着ている、赤い車に乗ってくる、黒い服を着ている、などの色のイメージがある
・整形手術に失敗して口が裂けたというのが一般的→当時広まり始めた整形手術に対してのマイナスイメージが原因との説
・ポマードや犬などが嫌い
・100m2秒で走る→噂の広がる速度を実際のスピードと勘違いしたとの説
・あっという間に広まり、あっという間に収束
・現在にいたるまで、単発的に広まることはある
・余談ながら、私はリアルで口裂け女の噂を耳にしたことがない

 そういえば、以前特命リサーチという番組で口裂け女のルーツをやっていたのですが、それによると起源は岐阜のどこかで、「お受験」ブームで子供を勉強させるために怖い噂を母親が創作した、その創作の元ネタは牛の刻参り?の女の伝説だ、という結論になってました。今では水木しげるの『妖怪画談』に載り、「都市伝説」や「学校の怪談」、「現代の噂話」の代表事例として必ず挙げられる口裂け女ですが、よもや韓国にまでその噂が伝染していようとは。しかもネット上で。記事によれば「話の出所はインターネットの特定サイトのようで、それを元に口コミで韓国中に広がっていったとみられる」。韓国語が全然理解できないtoroiaの邪推ですが、韓国でもここまで広まったというのには
・ソースに「日本で重大な被害をもたらした」など、当時の現実に対する大きな影響を明記したところがあったのでは?
・整形が一般的な韓国でソースが整形による失敗を強調したのでは?
・ネット上が発信源なので、インターネットに依存しきっている韓国社会では末端にまで広まるのが早かった
・実際に亡霊が徘徊していた
といった理由があるのではないかとか思います。でも、色々考えてみたところで、そもそもの日本の口裂け女が、ネットさえない時代にあれほど高速で広まったという理由自体がよくわからないのです。

 ただ、注意してほしいのは、口裂け女が今年になって初めて知られ始めたわけではないということ。噂話の人類学(韓国篇)(国立歴史民俗博物館島村恭則さんのページ)によれば、

韓国においても現代伝説はさかんに語られている。タクシーに出現する「消えるヒッチハイカー」型の幽霊の話、トイレや音楽室、校庭の銅像などにまつわる学校の怪談、「口裂け女」に相当する「赤いマスクの女」など、日本の現代伝説に酷似した話も少なくない。
 というわけで、日本でも専門家の間では「赤いマスク」の伝説は知られていたようです。ま、今回のように突発的に全国に広まる「謎」というのが都市伝説の面白みなわけですが。ちなみに、具体的な伝播の実態については、まだ何もわかっていないそうです(同ウェブサイト内韓国の都市伝説による)。参考文献が紹介されてるんで、今週中ぐらいに確認してみようかな。

 最後に、「口裂け女」。日本では狂人・怪人的意味合いが強いのですが、韓国では「自殺したものの霊」となっている。この違いに何か両国の文化的な差異が見えるような気もします。