竜と龍

Wikipediaで、竜の項目は龍に改名すべきという提案があったのを最近見つけた。それによると、龍は東洋のリュウであり、竜は西洋のドラゴンと東洋の龍の上位概念であり、ドラゴンを龍ということはないのであり、竜と龍は別の項目にすべきであるらしい。ドラゴンを龍とする例などいくらでも挙げられるのでいかにこの人が本を読んでいないのかわかるというものだ。一つの書物や論文内で竜と龍が使い分けられていない以上、この主張は明らかにわけがわからない俺様論理なのでいちいち相手にする必要もないのだけど、この人が言っているとおり、確かに東洋系のリュウには「龍」という字が使われることが多い。これは何故だろう?
手元の本を確かめてみると、たしかに「龍」派が圧倒的だ。やはり龍という漢字が古くイカメしい(そして新字体でもないのに読める人が多い)からだろうか。たとえば竜樹より龍樹のほうがおおいし……(これは固有名詞だけど)。ただしいくつか「竜」派があって、それのうちの一つは白川静の『中国の神話』。おそらく竜関連の文献の中で白川ほど漢字にこだわった人間もいないだろうことを考えると、意義深いものがある。ほかには袁珂『中国の神話伝説』、高馬三良訳『山海経』、平凡社ライブラリーの『捜神記』、窪徳忠の『道教の神々』など。

ちなみに、私がリュウを竜と表記しているのは、この人のような「竜と龍はちがうんだい! 龍は東洋ドラゴンなんだい!」とダダをこねる人と同列に扱われたくないからである(龍と表記している人の大半は、そんな人ではないけれど。たとえば龍表記の杉浦康平は霊も一貫して靈と表記しているが、これなどなかなか神々しい。神も藭と書けばいいかもしれない)。