マゴニア発見

 『中世の迷信』(Amazonは在庫切れ)という本。ラテン語の教会側文書を資料にして中世の民衆の俗信を読み解く本ですが、もちろん教会側に立って迷信を断罪するわけでもなく、かといって俗信と教会の対立の存在を強調するわけでもなく、流動する境目、融合する信仰、あいまいな規定、・・・に重点を置いています。アナール学派

 9世紀前半のリヨン大司教アゴバルドゥスの『雹と雷に関する民衆の謬信』(Agobardus Lugdunensis, Liber contra insulsam vulgi opinionem de grandine et tonitruis)に詳細があって、それによれば、貴族も平民も、雹と雷はテンペスタリイ(Tempestarii、嵐を呼ぶ者)によって起こされるものだと信じている。マゴニア(Magonia)という地域があって、そこから船が雲を超えてやってくる。雹を落としてだめになった果実をマゴニアに持ち帰り、小麦や果実などと引き換えにテンペスタリイに贈り物をする。あるときこの船から4人の男女が落ちてきたこともある。
 マゴニアは9世紀当時のほかの文献には知られていないそうですが、14世紀にまたシエナの聖ベルナルディーヌスがマゴニアの名前を挙げていますが、それは船を破壊する暴風雨の前兆となる雲に「ある人々」が与える名称だ、とのこと。

 いったいどんな神話がこの伝説の背景にあるんでしょうか?
 それとも、神話とは独立して古来から存在する信仰なんでしょうか?