エロマンガ考
エロマンガ島という、日本人にだけ有名なニューへブリデス諸島の島がある。Wikipedia日本語版によると「イロマンゴ」のほうが現地読みとして正しい、とある。しかし綴りをみるとErromangoだ。ガ>ゴは納得できるにしてもエ>イは納得できない。エロマンゴではないのか。
テリー・クロウリーが1998年に出版したAn Erromangan (Sye) Grammarによると、現地語(Erromangan)にはちゃんとiとeの区別があり、どちらも前舌母音でiが高、eが中なのでだいたい日本語のイとエに相当する。となるとイロマンゴのイは根拠がないように思える。また、この島のことを現地ではエロマガ(eromaga)というらしい。この言語ではgは常にŋつまり日本語でいう鼻濁音になるので英語などに転写するとngになるのだろうが、日本語の標準語だと語中にあるのでガ行で表記するのが適切ということになる。ただし鼻濁音が失われつつある現在、ン+ガ行で聞き取る人がいてもおかしくないはずであり、その場合この島のことをエロマンガと表記するのが最も適切ということになる。
以上のことから推測すると、日本語の地図や教科書などでエロマンガがイロマンゴになったのは、正しい発音を求めてのことではなく、単に単語の響きのきわどさを避けるため微妙に音をずらしただけ、というのが実態ではないかと思われる。
……2010年初のエントリがこれだけではなんなので、無理やりこのブログに関連付けると、エロマ(ン)ガ語で幽霊のことをnamtahというようです。