葛洪の賦

南方熊楠は、葛洪に大ムカデの古い記述があるといっている。
葛洪といえば『抱朴子』や『神仙伝』が中国オカルトマニアには有名かと思いますが、賦があるとは知らなかった。あれこれウェブ上を探してみたが(本も少しだけ)、こいつの賦がまとまっているところは見つからなかった。ただ引用があって、それ(趙瑞隆「古籍中的唇足動物」)によると

《遐觀賦》云:“南方蜈蚣,大者長百步,頭如車箱可畏惡,越人獵之,屠裂取肉,白如瓠,稱金爭買為羹炙。”

漢文はさっぱりゆえでまかせに訳すと、

『遐観賦』に「南方のムカデは100歩もの長さがあり、頭は車箱のようで恐ろしい。越の人は猟で捕らえ、殺して裂き肉を取るが、その肉はヒサゴのように白い。金で争ってそれを買い、ナマスにしたりあぶったりする」

という感じになるのかもしれません。

まだ大ムカデのことが上記ページにあったので引用の引用をすると、

沈懷遠《南越志》云:“南方晉安有山出蜈蚣,大者長丈餘,能啖牛,里人然炬遂得,以皮鞔鼓,肉曝為脯,美於牛肉。”

蔡絛《叢話》云:“嶠南蜈蚣,大者二三尺,螫人至死。”

こちらも勢いに任せて訳すと、

『南越志』には「南方の晋安には山があってムカデが出る。長さは一丈あまりでよく牛を食らう。土地の人はたいまつをもってこれを得、皮を太鼓にはり、肉を曝して乾し肉にするが、牛肉のようにおいしい」とある。
『叢話』には「嶠南のムカデは大きいものでは2〜3尺ほどもあり、人をかんで死に至らしめる」とある。

このページの作者は「似乎是過度誇大渲染,失去了真實性」と言ってます。現代中国語は漢文以上にでまかせなので(勉強したこともない)何となく想像するにおそらく「これらは白髪三千丈であって真実性に乏しい」とあるのでしょう。まあ、そうだと思います。

それにしても肉が白いとか、調理方法もあったり、美味で争って買う人がいるとかあったり、なんかほぼ確実に現実の動物が混ざっている気はします。なんなんでしょうか。