竜とドラゴンは敵なのか

 ドラゴン全般をかたるときに言われるのが、ドラゴンや竜はもともと善性の存在であり、大自然の象徴だったというものです。でも、私はどうしてもその考えになじめない。なにかおかしい。
 ・・・もともと「悪」の存在が人々の世界観の中にあるのではないか? その「悪」は、もっと本源的に考えると「敵」ではないでしょうか? 人間が生命として、共同体として存在する限り、そこには必ず「敵」が存在するはずです。だとすれば、その「敵」が世界観のなかに存在しないはずがない。人間は本来大自然全てに感謝して生きるアニミズム多神教だったのですよ、などと軽々しく言われますが、そのような「未開」文化など聞いたことありません(すべての事物にカミを認める世界など息苦しくて生きていられないわけで、「未開」文化でも事物を選別して一部にだけカミを認めるという事例はよく知られています)。根源的存在としての「敵」は必ず人類文化・ヒューマンユニヴァーサルズのなかにあるはずなのです。それがドラゴンであるかないかは断定できませんが、いるはずなのです。その敵が「悪」なのか「なだめる存在」なのかはともかくとして、共同体に対する共同体外のネガティヴな存在が全ての文化において「いると考えられている」という可能性をもう少し考えたほうがいいんじゃないかと思ってます。