八岐大蛇=まとめ

 ここで古代から近世にいたる八岐大蛇神話を一つにまとめてみましょう。

 スサノヲは高天原で大暴れした上にマタラ神などを引き連れて天津神に反乱を起こし、無数の剣を突き立てて城郭を立てた。しかしタヂカラヲなどの強力な神々によってあっという間に蹴散らされてしまい、高天原から追放されてしまった。しかしアマテラスはそのような弟の行状が嫌になって天岩戸に閉じこもった。この事件のとき、アマテラスは自分の剣を伊吹山に落としてしまった。それを拾ったのか、または落ちてきたのが刺さったのかわからないが、とにかく入手したのが八岐大蛇である。八岐大蛇はスサノヲの天界での悪行によって陰の属性が増えたのに対応して地上に誕生した魔王である。また、クニノトコタチが剣になって雲に乗り伊吹山、そして出雲にきたとも言う。八岐大蛇は出雲の国の簸の河上にある池、または海の中に住んでいる蛇の怪物である。頭も尾も八つずつあり、角が生え、背中からは無数の樹木がこびりつき、腹からは血が滴り、穴から出るときは煙や炎を噴出す恐ろしい存在だった。この大蛇は周辺住民を毎年取っては食い、村々から嘆きの声が絶えることはなかった。力が衰えた国津神であるアシナヅチテナヅチ一家も同じである。彼らには多くの少女がいたが、八岐大蛇がそれを次々と取っては食い、そして最後の一人クシナダヒメだけが残っていた。スサノヲは河上から箸が流れてくるのを見つけ、そこにいってみると三人が泣いていた。彼はこの三人の泣き声を聴いて事情をたずねた。そして、クシナダヒメをくれるなら蛇を退治する、と言った。老夫婦は喜んで同意した。スサノヲはまず老夫婦に、よく醸造した酒を八つの船に一杯入れるように指示した。そしてクシナダヒメにはユツツマ櫛をさし、美しい女性の人形を萱でつくり、高いところに乗せた。その人形の中には火種を入れた。夜になり、目が月日のように輝き、山のように動く八岐大蛇がやってきた。大蛇は酒船に映る高いところの人形を姫と思って喜んだ。いつもは四つの口でしか食べないが、今日はすべての口で食べられる、と。そして顔を突っ込んでみたところそれは酒だった。しかしあまりにも強く、いくつかの頭はすぐにダウンしてしまった。のこった頭は姫ではないことに気づき、高台にある女の人形を見つけて食べた。しかしそのなかには火種が含まれており、酒の中の油もあいまってこの蛇の体内から燃え始めた。さらにクシナダヒメの櫛が蛇に変じて大蛇を食い始め、そしてスサノヲはトツカノツルギで八岐大蛇をずたずたに切った。しかし尾の一つを斬ろうとすると刃こぼれがするので縦に裂いてみると、そこに剣があった。この剣は、蛇の体内にあったときはいつもうえに群雲があった。それゆえにムラクモノツルギという。のちにクサナギノツルギという。スサノヲはこれをアマテラスに献上、アマテラスは自分がいつぞやに落としたものだと喜んだのだった。蛇の死体が流れたところはそれにちなんだ地名がつけられた。八段に斬られた体は、それぞれが一つの小さな蛇となって天にのぼり、雷神となった。大蛇の神霊は伊吹山に戻って大明神となり、現地の人に奉られた。雷神はその後ムラクモノツルギに従ってついていった。この剣をもって東夷征伐したヤマトタケルノミコトは、伊吹山で遭遇した大蛇の神を甘く見て毒に打たれ、死んだ。その後八岐大蛇の雷神は八剣神社に収まった。また、その霊は厳島大明神=竜神の娘に祈った平清盛に応じて安徳天皇となり、この世に転生した。80代安徳天皇はその後8歳で神剣とともに海に沈み、竜神=八岐大蛇となった安徳天皇によって奪い返された。また伊吹大明神は女のもとに通って子供を生ませたが、それは酒呑童子となった。しかし酒呑童子も酒を飲んでしまったところで首をはねられるのである。
 以上で八岐大蛇の物語はおしまい。


 さて、残るは・・・・・・・ヤマラノオロチ・・・・・