事典の名前についての問題

 設置している掲示板によせられる質問と、最近追加したり追加準備中の項目を見比べていて思うのですが、「幻想動物の事典」という看板は羊頭狗肉だったりするのでしょうか? と、恐る恐る自問自答。
 「幻想動物」というからには、まず第一に「幻想」ではあるのですけど、それと同じくらい重要なのが「動物」ですよね。つまり、現実には存在しない動物たちの事典。これが、私の非常にシンプルなホームページのタイトルを一見して判断するところのコンテンツであると思います。
 最近ちょこちょこ書いているモチーフ・インデックスの項目になっているのをひけば、具体的に「幻想動物」といえばドラゴン、エンプーサ、ケルベロス、ベヘモト、ケンタウロスミノタウロスサテュロスロック鳥、スィームルグ、フェニックス、ペガサス、グリフィン、ヒポグリフ、スフィンクス、ハルピュイア、セイレーン、ガルダレヴィアタン、人魚、ナーガ、バロメッツ、えとせとらえとせとら、というように、もしいるとすれば「動物図鑑」にイラスト入りで仲間入りすることができる存在たち。
 そりゃそうだよなー、幻想動物といえばまず目で見る・頭に思い浮かべるイメージが印象的だからこそ興味を持つのであって、だれも叙事詩の英雄の敵としてのドラゴン、だとか民話のモチーフとしての人食い鬼、とかそのような機能面や構造などの「字面」から入る人なんて滅多にいません。というか、見たことない。んで、最近追加の項目を見てみると、とりあえず人間に悪いことをするやつだということはわかるんだけど、それだけ、というのが多いです。仏典にある鬼魅だとか、マヤの地下世界の主だとか。

 開き直るわけではないですが、もとより「幻想動物の事典」は完全な自己満足のために作成しています。その証拠が、WordsworthというフリーのデータベースソフトでHTMLを作成しているということ。このソフトウェアはHTMLも細かく調整はできるのですが、基本はオフラインのデータベースファイルの操作です。私もそうやって使ってます。そして、自分の幻想的な存在について、忘れないように、たとえるなら備忘録のように使ってます。だから、すぐに詳しく書いてある本が見つかるようなドラゴンとかペガサスとかナーガとかの有名な項目は、とりあえず名前を入れているだけでほとんど内容がないですよね。そのかわり、聞いたこともないような精霊や端役の邪神が名を連ねていたりする。ついでに言うなら、この事典は私にとってはあくまで文献要約と文献一覧(bibliography)にすぎないし、ある幻想動物について調べるときに自分の事典だけを参照することはありません。
 そんなわけだから、「幻想動物の事典」は、ほかの親切な幻獣ページや神話関連のページにもあるような基本的な幻想動物については記述がない場合もあるし、50音順の事典形式だから、文化的な背景を初心者に教えて段階的に知識を与えていくような優しいページになることもありません。主要な項目に記述がある場合、それは、たまたま昔、事典とは別につくったサービス・ページに書いた説明を使いまわしているだけです。
 言い訳じみた言い方にしかならないのを承知で、ではなぜホームページを公開しているかに答えるとすれば、一つは、自分の知識になりうる情報の範囲を事典として公開しておくことで、「あれは知っている、これは知しらない」などといちいち初対面の人に言わずにすむことが一つ。より豊富な情報に触れることができる人が間違い探しをしてくれるのを期待しているのが一つ。自分のページを公開することで、ほかの似たような事典系ページと切磋琢磨、というか競合してお互いに高めあっていけばいいな、と思っているのが一つ。「知」は共有すべきものだから、公開している。というのが一つ。ということになります。最後の一つの理由にしたがって、私は掲示板を設置し、ブログのコメント欄を開放しているわけです。また、同じく最後の一つの理由にしたがって、私は神話や民話の要約を自分の創作だとか作品だとか主張する気は一切ありません。当たり前ですが。

 如上、縷々、見掛け倒しの利己的な製造品についての逃げ口上はおしまい。