事典の項目名についての悩み

!!!《ネタばれ注意》!!!


 今回のテーマは「ネタばれ注意」です。幻想動物への一般人の対処法として比較的ポピュラーなのが「名前を知ること」です。トム・ティット・トットや「大工と鬼六」といった、仕事代行型の物語がその中でもとくに有名なものだと思いますが、たとえば今わたしが個人的に調べている仏教の除魔経典でも、「魔物たちの名前を唱えれば害をなさない」とお釈迦様直々におっしゃってる(もちろんそういう意味では偽経なのですが)のをよく見かけます。そして、そのセリフ以下にたくさん具体的な名前が挙がっているので、唱えさえすれば魔物の害にあわないというありがたいお経として昔は世間に流布したことでしょう。

 たとえば「鬼六」を項目名にして追加すると、見ている人は「ああ、この鬼の名前は鬼六なんだな」と、物語の終わりを見ないうちに気づいてしまいます。というか、民話の表題「大工と鬼六」自体が思いっきりネタばれなのですが。そもそも民話の表題はおかしなものが結構あって「鶴の恩返し」だって最後のドンデン返しをそのまま表題にしちゃったらネタばれどころの騒ぎではないと思うのですが、いかがでしょう?
 そんな中でも、「鬼六」は本当に偶然に名前を当てるだけですからまだいいんですが、「化物寺」という民話に登場する幻想動物たちは名前そのものが謎解きになっていて、それを「ひらがな」で表記するか「漢字」で表記するかによってネタばれ度が100%異なってくるわけです。
 侍さんが廃寺に泊まっていると、こんな会話が聞こえてきます。
 「木へんに春の字のテイテイコボシは内か」
 「わしはサイチクリンのイチガンケイじゃ」
 「ナンチのギョジョじゃ」
 「トウヤのバズじゃ」

 最初のものは椿の槌&茶カスの袋の化け物なんですが、次が謎解きに使われる名前になります。結論からいうとそれぞれ
 「西竹林の一眼鶏」
 「南池の魚女」
 「東屋の馬頭」
 となって、一種異様な化け物の正体が暴かれます。

 項目名に「一眼鶏」を使うか「いちがんけい」を使うか。悩むほどじゃないって言えばそうなんですが。