一つ眼、隻眼、一つ目、片目。

 どの用語を使えばいいのか分かりませんが、エッダを買った理由の一つがこれだったりします。

 さて、民間説話(神話やアネクドート含む)研究では、物語の中の「部品」「要素」を徹底的に分類した、スティス・トムソン(トンプソン? Stith Thompson)の「モチーフ・インデックス」というのが使われています。具体的にそれがどういうのかというと、AからZまでまず大分類があって、そのなかで4桁まで小分類があり、だいたい100、10、1と分類が小さくなり、そのさらに小分類は小数点のようなものを準備して対応します。
 たとえば動物は「B」。そのうち0-99は「神話的な動物」、つまり幻想動物です。10番台は「幻獣と合成獣」。そして、その中の10番台が「幻獣、幻鳥」です。そしてさらにその中の11番台が「ドラゴン」となります。
 ここから細かくドラゴンについてのモチーフが分類されます。B11.1は「ドラゴンの起源」。ピリオドがついた場合の下位分類は、もう一つピリオドをつけることによって表現されます。たとえば、「卵から産まれたドラゴン」ならB11.1.1.となるわけです。
 「三つ首ドラゴン」は、まず「ドラゴンの形態」がB11.2.なのでそこに入ることになり、下位の「多頭ドラゴン」は3、さらにその下位になり、一番めに「7首ドラゴン」があるので次のB11.2.3.2.になります。
 まあこんな感じですが、もちろん姿かたちだけではなく、たとえばD327.2.なら「アザラシが人に変身する」とかQ260.なら「騙した者が罰せられる」とか、要するに物語を形作っている細胞を系統樹的に分類しているのがこの「モチーフインデックス」というわけです。もちろん問題点も多いのですが、とはいっても代わりに使えるようなモノがない、ということで、充分現役だそうです。ちなみに改版がもうそろそろ出るそうな。

 さて、そのうち「一つ目」のモチーフを抽出してみました(Index巻より)。
「一つ眼one-eyed」
神 A128.2.
 島に変化する A955.5.
なぜ女性が一つ眼か A1316.3.2.
怪物。反キリスト A1075.
豚 B15.4.5.
「荒々しい狩」の一つ眼の種まき E501.4.3.1.
人 F512.1.
一本足、一本手の人 F525.3.
巨人 F531.1.
魔女 G213.1.
悪魔 G369.7.
巨人 G511.1.
控除:一つ眼の駱駝 J1661.1.1.
なぜ一つ眼の兵士は良いのか J1494.
王 J1675.4.
悪党 K2273.
一つ眼の人間の臨席を許さない王 P14.2.
子供 T551.1.
馬の鑑定士 X122.
牧師 X413.


……もちろん番号があってもしかたないのですけど。モチーフインデックスの個々のモチーフには、一応そのモチーフのある物語が載っている資料を2,3提示してはいるものの、入手しづらいものばかりなので個人的にはあまり役に立たなかったりします。

 とはいっても、今のところ、結果的にモチーフインデックスは幻想動物までも学術的に分類していて広範に使用されている唯一の分類だったりするので、これをどう使うか、そのあたり幻想動物研究学者さんに頑張っていただきたいです。