古代ペルシアへの道

 伊藤義教『古代ペルシア』というのを図書館で借りて読んでみると、次のような下りがありました。

 「参考文献」
 ところで、その中世ペルシア語のことであるが、(中略)訳と名のつくものはあっても、訳とみとめられるものは絶無に近い。したがって、翻訳書をあげれば読者を迷わすおそれが、多分にどころか、確実にあるわけ。さりとて、翻訳抜きの原典だけでは、もっと役にたちそうもない。(中略)翻訳書を示さないのは、翻訳されていないか、されていても挙げないほうがよいと考えたか、あるいは本書には不用とみなしたもの、などである。

 太字は、原書に上点強調があったもの。この本は1974年のものですから、今からちょうど30年前のものになりますね。中世ペルシア語がこの有様ですから、アヴェスター以外資料のないアヴェスター語についてはもっとひどいのでは、と思いながら『言語学大辞典』の「アヴェスタ語」をひいてみると、詳しい文法解説があったけど意味がわからないのはさておいて、参考文献の欄に、こちらにも「使える辞書はない」とか悲しいことが書かれていました。どちらにしても私自身は原典に当たって読む気は全くしないのですけど、原典訳というものがことごとくそのような状態だということは一応知っておいたらいいと思います。