民話集がたくさん復刊されている

ふと、久しぶりに書店に寄ってみたら、目的の本以外に、岩波文庫の棚にかなり多くの数の「今月の復刊」がありました。しかも民話集がかなり多いときています。完全にストライクゾーンですが、とりあえずは持っていないものを2冊だけ買いました……。
 この手の民話集は文庫本だからというのもあるのですが、いくつか原語の民話集から選んで訳している、つまり完訳ではない、というのが残念なところです。

イタリア民話集 上 イタロ・カルヴィーノ
イタリア民話集 下 イタロ・カルヴィーノ
イギリス民話集 河野一郎
シベリア民話集 斎藤君子編訳
聖なるもの ルドルフ・オットー
スペイン民話集 エスピノーサ
中国民話集 飯倉照平編訳
ハンガリー民話集 オルトゥタイ・ジュラ
フランス民話集 新倉朗子編訳
ロシア民話集 上 アファナーシエフ
ロシア民話集 下 アファナーシエフ

いくつか、重版再開しているのにAmazonでは在庫切れですね。書店に足を運んだほうがいいでしょう

 民話の中に登場する「幻想動物」は、強烈な個性を持っており、ほかのどの存在とも変えられない神話上の怪物たちと異なり、「交換可能な」存在です。例えば「イタリア民話集」では魔法使いと竜が入れ替わっても物語の筋に影響はなかったりします。物語と怪物の関係は完全に主従で、物語によって怪物の性質は決定され、怪物はいわば物語に名前を貸しているにすぎません。そういう意味では、民話の中に登場する怪物を文字通りに受け取って「これこれにはこんな性質もあればこんな性格もある」としてしまうのは不正確で、それは単に複数の物語に名前が出てくるだけ、という程度のものなのです。物語によって意味付けられた怪物の性格をどこまでその怪物の名前からイメージされる性格と関連付けるか、これは難しいです。

 ちなみに本来の目的は本のページにも紹介している『ホメーロスの諸神賛歌』。岩波にも『四つのギリシア神話』というタイトルで収録されているのですが、これは文字通り四つの賛歌が収められているだけ。完訳のちくま文庫版は実に33の賛歌が収められています。といっても、四つ以外は1ページくらいとかその程度の長さなのですが。幻想動物の事典としては山羊神パーンへの賛歌に注目なのですが、そのほかにもちょくちょく怪物の名前が登場したりして、おもしろいです。もちろん普通のギリシア神話ファンも必携だと思います。