買った本が文庫化

苦労して見つけた本、高いのに無理して買った本。
そういう本が数ヶ月後に文庫化/paperback化されているのを発見すると虚しい。
たとえば『新耳袋』。もともとがソフトカバーなので後述する理由があてはまらない。
日夏耿之介の『吸血妖魅考』を近くの古本屋で6000円で発見した直後にちくま学芸文庫で復刊されるとの情報を手に入れ冷や汗をかいたこともある。

とにかくそういうときは「ハードカバーのほうが物持ちがいいんだ」とか「初版だから価値あるぞ」とか自分を慰めてみる。
でも酸性紙だったりする。

だから最近は慎重に筑摩書房や岩波の動向をうかがっているのだが、、、
それと同時にハードカバーに対して購入意欲がわかなくなってしまったのは悲しい。

ところで、去年はハヤカワ文庫という思わぬところから復刊がされていた。博品社の博物誌シリーズ(まだ少ないが)。

博品社はもう倒産しているが、幻獣好きにとっては欠かすことのできないラインナップを揃えていた、地味ながら名出版社である。たとえば荒俣宏の『怪物の友』などは、相当数この叢書の一つ『奇怪動物百科』から、間違っている記述も含めてパクってる。有名な『鼻行類』もこのなかに入ってる。。
さてこの叢書の存在を知ったのは10年くらいまえにさかのぼる。しかしそのときはもうすでに倒産していたので手に入るあてがなかった。―――それが2,3年前近くのブックオフにずらっと1冊750円で並べられていたから驚きである。こういう掘り出し物がときどきあるからこの中古書店は侮れない。
結局『飛行の古代史』『サイと一角獣』『キリン伝来考』『鼻行類』(これは平凡社ライブラリーで手に入る)『スキタイの子羊』『中世動物譚』などを買いました。ノミの本とテナガザルとハンニバルの象の本は買わなかった。今思えば買っておけばよかったかもしれない。
ただ、欲しかった『奇怪動物百科』と『シェイクスピアの鳥類学』『動物と地図』はもうなかった。たぶん売れたのだろう。

それが去年、地味〜にハヤカワ文庫から1冊本で文庫化されていた(「奇怪」)。地味すぎてしばらく気づかず、今年になって2chの未確認動物スレに情報があるのを知って初めて気づいた。即書店に走ったのは言うまでもない。ちなみに文庫版あとがきは金子隆一

そして今日再び本屋をぼんやり眺めていたら『キリン伝来考』まで文庫化されているのを知った。戦慄した。
このままではすべての博物誌シリーズが文庫化されてしまうのではないか―――値段はいずれもブックオフ購入時よりは高いにせよ、もし「シェイクスピアの鳥類学」が出たら買ってしまうだろうし(分厚いから上下巻かも)ノミも多分買っちゃうだろう。となると問題は本棚に並べるときのイビツさである。同シリーズは一つにまとめたいが、文庫本をハードカバーなど背の高い本と一緒に並べてしまうと見た目が悪い。それに奥に入ってしまって瞥見しただけでは見つからないこともある。
誰が見るというわけでもないけど。

とはいえ、こういうのに関しては(値段を抜きにしても)あまり後悔はしていない。というのも博品社の本は博物誌の名の示すとおり図版が多く含まれていて、図版というのは文庫本とはあいいれないコンテンツだから。ページにまたがることも多いし、縮小されて細部がつぶれてしまうこともある。
・・・そう考えて自分を慰めるわけです。

ま、私のような若輩者にはまだこういう経験は少ないのですけどね。