二つの発見

(toroiaにとって)二つお知らせがあります。良い知らせと悪い知らせです。
んじゃ、悪い知らせのほうから語ってくれ。

 というわけで、以前夏ごろにクダンに興味を持っていると書いたことがあって、それをいつか書こうと思っていたのですが、クダン情報が掲載されているという『妖怪伝説奇聞』を立ち読みしてみたところ、自分がやろうとしたことが書かれていた……。見た瞬間「しまった」と思わずつぶやいてしまいましたw

具体的には何かというと、クダンと牛女の対称的な特徴について。

クダン
・人面牛身
・牛から生まれる
・しゃべる
・見るのは厄除け

牛女
・牛面人身
・人から生まれる
・しゃべらない
・見るのは災害

そう、このように両妖怪は見事に対称的な特徴を持っているのです。だからこの二つを(『新耳袋』初出時のように)同一視すべきではなく、区別すべきだという意見、それともう一つ「ネガとポジのような関係だ」とする意見、また「あまり細かいことにこだわらない」という意見、がそれぞれ簡単に書かれていました。

なんだかこれだけでは馬鹿らしいので、toroiaが想定したその他の対称・対照的な事項を書いてみます。
元ネタは色々書き散らしていたノート。夏ごろに書いていたので自分でも何を書いたのか分からないところもありますが・・・。

妖怪制限領域侵犯結果
クダン閉鎖された時間:出産後すぐに死ぬ未来への言及死 《あの世へ》
牛女閉鎖された空間:座敷牢に閉じ込められる屋敷の消失・破壊脱出 《峠へ》
ミノタウロス閉鎖された空間:迷宮アリアドネの糸ミノタウロスの死/英雄の脱出
怪物なのに人間に閉じ込められているというところが妙に奇形や精神障害などを連想をさせるリアリティがあって、そのあたりこの物語に惹かれる人が多いということなのでしょうが、私は特に現実に出発点を求めているわけではありません。妖怪伝説奇聞には牛殺しの儀礼に起源を求めようとしている人の説も紹介されていましたが、何故か超古代日本史になってしまっているw


クダンは即死/牛女は現役 クダンは食べない/牛女は肉を食べる クダンは裸/牛女は着物

クダン・・・家畜業(生) 牛と人との交配→怪物
牛女・・・屠畜業(死) 人と人との交配→怪物
別のストーリー:肉屋(死) 人と人との交配→牛に変身する娘。財がもたらされる。

で、これをレヴィ・ストロースの神話変換公式Fx(a):Fx(b)::Fx(b):Fx(a)にあてはめようとしたんですが、無理だった。


さて、良い知らせのほうは、こちらも並んでる本の背表紙を見て気づいたことでスレイプニルと首切れ馬で言及しておいたスラヴィクの本を見つけたということ! しかも邦訳! まさかあるとは思いませんでした。書名は『日本文化の古層』で、いくつかの論文が訳出されていますが、なかでもこの「日本とゲルマンの祭祀秘密結社」は主要な位置を占めているようです。まだ詳しくは読んでいないのですが、これまた私の興味である「荒々しい狩り」についても書かれていて、面白い。また私は読んでいないのですが、岡正雄『異人その他』に関連した論文があるようです。これは日本の祭祀のみならずゲルマン神話キリスト教以降のゲルマン民俗に興味がある人にもおすすめです。