スレイプニルと首切れ馬

 某所でユグドラシル世界樹、馬のことやここのコメント欄で隻眼と馬のことをエリアーデを通して調べていたら、スレイプニルの多脚性はシベリアやほかの民族にも見られるが、これは男性結社に関係あると。まあドイツや北欧の事例は納得するとして、そこに日本の首切れ馬のことも載っていた。
 「八脚もしくは頭のない馬は、ゲルマンと日本の『男性結社』のどちらもの儀礼と神話に記録されている」。
 で、出典としてヘフラーとスラヴィクという人を引用しているのですがヘフラーはドイツ系で、スラヴィクのほうは
Slavik, Alexander. "Kultische Geheimbünde derJapaner und Germanen", in Die Indogermanen- und Germanenfräge neue Wege zu ihrer Lösung, pp.675-763. 1936. (Wiener Beiträge zur Kulturgeschichte und Linguistik IV.)
 が出典。ここにわざわざ書いたのは、私にはちょっと確かめようがないからです。

 首切れ馬に乗るのは、一つ目の鬼である夜行さん。で、オージンのスレイプニルではなくてヴォータンの幽霊馬のほうは、片目。そして、夜行さんのほうは「百鬼夜行」の一群を引きつれ、ヴォータンのほうは「荒々しい狩り」を引き連れる。ただし、首切れ馬は単独で現れるという伝承のほうが多い。
 妖怪関係の資料から読み取れるのは、おそらくスラヴィクが男性結社と解釈したのは「百鬼夜行」なんだと思うのですが、それはどうなんでしょう? 少なくとも記録的には平安にさかのぼる「百鬼夜行」は都市部に現れ、全然田舎風の男性結社の感じはしません。まぁ、夜行さんはおもに徳島の伝承ですから、単に「百鬼夜行」といってもその起源は違うのかもしれないですけど。でも、正直この比較は首肯はできないですね。日本語の資料を直接読める妖怪好きの人間としては。