フランスのドラゴン

 フランスのドラゴンは、聖人伝説と対になっている。また、お祭り行列の出し物に現れる。有名なのがタラスク。しかし、これらが12世紀ごろから始まったもので、都市にのみ見られ、農村には存在しないということが注目される。可能性として、異教的な原型はドラゴンではない怪物で、キリスト教の影響と中世都市の発展によってドラゴンと想像されたとも考えられる。中世のほかの都市では「町の巨人」といって、よく似た祭りの出し物に人間型の巨人があることからも、そのことがうかがえる。

 フランスには、ラテン語経由のヴイーヴル(Vouivre。ヴィーヴルにあらず)というワーム系ドラゴンもいる。こちらは言葉こそラテン語語源であるものの、ガリアの彫刻に見られる宗教的な蛇のシンボルの空想性から推測すると、それが意味する存在はキリスト教以前から蛇の形態をしていたのではないかとも考えられる。とはいえ、民間伝承中の宝石の眼を持ち翼があるヴイーヴルとガリアの彫刻に見られる角のある蛇とは図像的にかけ離れている。また、ケルト宗教では、ゲルマンにおけるミズガルズオルムやファーヴニルといった、戦闘機能を持つ存在に対立する異教時代のドラゴンの話は重要性を持っていなかったらしく、もっぱら地中海世界のように、肯定的なシンボルを付与されることが多かった可能性もある。

 最後の一文からやや突飛な「竜-蛇」の流れを思いついた。裏づけに時間がかかりそうだけど、キーポイントは「多頭」。