南米アマゾンの神話と超常現象について

 また、アマゾンに来た。

 ある年老いた男が死んだ。男の息子はベニトという名前の呪術師だった。男と妻、女中は父を家のまんなかに埋葬し、墓穴からはい出てきたとき食べ物があるように、狩や釣りをするときに生きている人を困らせないように、そばに矢、衣類、食料の入った鍋を置き、さらにバナナ、さとうきびなどを植えて、家から離れて行った。
 でも、死者は夜な夜な墓穴を抜け出し、嘆き悲しみながらふわふわ空中を漂っていたので、夜はだれもそこに近づこうとはしなかった。ベニトは何かを忘れていたのかもしれない。人々は畑や家を捨て、他の川のところへと移住した。
 ベニトは呪術師だったので、父に何が起こったのか調べてみようと思った。彼は女2人とともに、明け方に家を出て真昼に墓のところに着いた。ベニトはアヤワスカという幻覚剤のようなものを服用し、呪術の霊を呼び寄せた。夜になると、あの世から気味の悪い「ウッウッウッ」という音が聞こえてきた。女二人妻と女中はベニトを引きとめようとしたが、彼は何が望みなのか聞いてくるといって、その音のする方向に消えていった。
 死者がいた。死者は頭から足先まで帽子で隠れていて、家の中にあるカヌーの上に座っていた。「お前は誰だ」。帽子を取った死者は、自分がベニトの父であることを打ち明けた。「私は生きている。私の体はもう痛くない」。ベニトは苦しさと嬉しさが混じった感情が昂じて泣き出した。父は、ベニトの義父もあの世にいることを教えた。あの世は幸せなところで、自分たちはこの世に用はない。ピロ族の人々がみな、あの世にいられれば、もっと幸せなのだという。義父も現れて言った。私の皮膚病はまだ治癒していないが、あの世では皮膚病があっても幸せであると。ベニトはその後、5日に亘ってあの世についての教えを受けた。新月だったから、女たちも隠れてその話を聞いていた。
 5日経ち、ベニトはすっかりこの世にもあの世にも通暁した知者となった。そして、惨めなこの世にいる価値はないと考え、ピロ族をみなあの世に移そうと考えた。死者たちはピロ族を受け入れる準備をはじめ、ベニトは川のほうへ行って人々を呼び集めた。それには六日もかからなかった。女たちは人々にアヤワスカをご馳走した。みんな幻覚剤を飲んで酔い、2日ずっと歌い踊った。三日目の夜、死者たちは、明日の真昼に全員身体と魂ごと天国に移されると言った。しかし、月経中の女性は不浄だからその日に天に昇ることはできない、とも。
 三日目が来た。空を見つめていると、空が月、太陽、星と一緒に少しずつ降りてきた。彼らは驚いたが、自分たちを迎え入れるためだと思い、逃げなかった。空の真ん中で、扉が開いた。戸のところに、人の姿があった。戸から一本の綱が降りてきた。そこには巨大な木のお盆が吊り下げられている。お盆は地上まで降りないで、地上50cmくらいのところに浮かんだ。人々は順序良く並んでお盆に登った。そして、お盆は天上へと引き上げられていった。二度目もうまくいった。しかし、三度目に月経中の女性が入り、お盆の綱が切れ、その人々はみんな地上に落ちてしまった。

 出典: リカルド・アルバレス著、向晶子訳『森と川の神話』1988、文京書房

 藤岡弘、探検隊が決死の探検でクルピラとイプピアーラを追い求めたアマゾン。そこは、まだ幾千、幾万とも知れぬ幻想動物たちの宝庫です。今回はそのアマゾンの中でももっとも奥部、ブラジルを越えてペルーにまで広がるアマゾン川流域とウカヤリ川流域が接するところ、そのなかでも上流にマチュピチュやクスコといったインカ文明の遺墟があるウルバンバ川沿いに住んでいるピロ族のお話です。

 それはいいとして、これはどう考えてもあれです。UFOです。誰が読んでもUFOが降りてきて、人々を連れ去った物語であるようにしか見えません。
 そもそも地下に埋められて這い出てきて、天上は極楽だ〜とかいうのが不自然です。これはたぶん宇宙人が死者に乗り移って口からでまかせを言ったんでしょう。人々を幻覚剤で腑抜けにしておいて、あげく集団拉致。描写がやけに詳細なのも物語の信憑性を高めます。円盤状の乗り物が地上50センチに浮かぶ、これはおそらく小船なのでしょう。天が近づいてきて扉が開く、おそらく母船は反対側の映像を前面に映し出す光学迷彩を使用しているのでしょう。この場合、母船の垂直方向の厚さがあればあるほど、天上は近づいて見えます。そういえば光学迷彩を使用していた宇宙人プレデターも南米のジャングルに来ていましたから、何か関係あるのかもしれません。また、逆に詳細が不明なところも、信憑性を高めています。たとえば天上についての固有名詞が一切出てきません。普通なら天の神とか太陽神、天上世界の名称などが出てきそうなものなのですが、この神話においてはそのような類の名詞はまったく使われず、まさに人々がその場で始めて知った驚きを正確に描写しているといえます。
 この神話は、最近頻発している南米の超常現象ブームを考えるに当たってもっと知られるべきです。