千夜一夜物語って

 幻想動物の事典では、この事典の説明と凡例。

  できるだけ「信仰されていた」「実在が信じられていた」ものに限ることにしました。

 と書いていて、それを半ば小説・ゲーム系を排斥するための口実として利用しているのですが、「千夜一夜物語」のような「民間説話」をどのように扱うべきか、読んでいるうちに迷ってます。

 アファナーシエフのロシア民話集にあるローマン・ヤコブソンによる解説の中で「聞き手も話しても民話を嘘の話だと考えていた」とあります。これはどの文化でも同じモノらしく、そのような事情ではあるのですが、民話の物語、筋やストーリーの現実性を否定することはあっても、その中に登場する「人間」や「家」や「動物」や「森」や「城」などのアイテムや要素は現実に存在するわけで、その中に「魔女」や「怪物」を入れてもいいのでは、というスタンスでこの辞書にもそのような存在をいくつか追加しています。
 ……でもそれっておかしいですよね。自分でやっておきながら。「創作モノ」を排除しておきながら、「主観的実在性」という意味では同レベルにある「民話」の中の説明を載せてしまうのは矛盾してるような感じがします。

 ついでにタイトルの「千夜一夜物語」ですが。当初このブログを書こうとしたきっかけは、あまりにメルヘンチックな「ジャーン・シャー」の物語に登場するジン(超自然的な精霊)の固有名詞をどう扱おうか悩んだからです。当時の千夜一夜物語の聞き手・読み手たちがこれらのジンの存在を信じていたのは確実だとしても、物語自体を虚構だと考えた可能性が高いと考えれば、この長い物語における多数の固有名詞は虚構だと考えていた、とするのが筋にかなってます。だとすれば、明らかにこの事典の収集範囲から外れてしまうわけです。



 どうしよう……