続きです。
アエリアヌス、3巻41章。
インドには一角の馬が、そして同じく単角のロバがいるという。また、その角から彼らは飲料容器をつくり、もし誰かが毒を盛ってその人がそれを飲んでも、それがその人を害することはない。馬とロバの角はどちらも毒に対する防御手段になるようである。
同、4巻42章。
ここにある「一角獣」は
[長めなので適当に敷衍訳]
インドには馬ぐらいの大きさの野生のロバがいる。これらの身体は白いが、頭だけは紫色で、その中でも目は深い青色を放っている。この動物の額からは、だいたい1.5キュビトの角が生えている。角の根元の部分は白く、上部は真紅で、中ほどは漆黒である。インドの高位の人々はこの角から飲料容器をつくり、金をまいて装飾する。また、この容器から飲むものは不治の病にかかることがないともいう。痙攣や癲癇には無縁になるし、毒にやられることもない。
[中略、アストラガロース(関節の骨の一種)についての話。単蹄と明記されている。]
これらの動物はどんなロバや馬や鹿よりも足が速い。最初はゆっくり走るが段々と速くなっていき、とうとう追いつけなくなってしまう。
メスが子供を産むと、オスもその面倒を見る。また、このロバは特に荒涼とした平原にいることが多い。だから、インド人たちがロバを狩に行く時は、ロバたちは子ロバをかばって自分で戦う。戦いでは馬や人は沢山角で刺されたり噛まれたりして犠牲を出すが、最終的には槍などで殺される。生きてロバを捕らえることはできない。インド人たちは角を取るが、苦いので肉は食べない。
・インドのロバ。
・単蹄。
・角には毒よけ効果。
・強い。
次、ストラボンの『地理誌』15巻1章56節より。
これだけでした。
例えば、メガステネスは、…中略…頭が鹿で一本の角がある馬のことに言及している
「プリニウスと一角獣」のまとめに追加してみると、アエリアヌスのものは2つめのインドのロバ系。でも、生きて捕らえることができないのはストラボンの引用するメガステネスもインドのロバ系っぽいですが、プリニウスのいう、頭が鹿のような馬モノケロスにも該当しなくもないです。
再まとめです。
蹄の形状 | 角のあるところ | 荒地に棲み、狂暴 | 角の効用 | |
クテシアス(アエリアヌス):インドの野生ロバ | 単蹄 | 額 | ○ | ○ |
クテシアス(アリストテレス):インドのロバ | 単蹄 | - | - | - |
クテシアス(プリニウス):1本角の牛(サイ) | 単蹄 | - | - | |
クテシアス(プリニウス):モノケロス | 象のよう | - | ○ | - |
メガステネス(アエリアヌス):カルタゾノス | 象のよう | 眉間 | ○ | - |
メガステネス(ストラボン):インドの馬 | - (単) | - | - | |
アリストテレス:オリュクス | 偶蹄 | - | - | - |
プリニウス:インド牛 | - | - | - | - |
プリニウス:インドロバ | 単蹄 | - | - | - |
プリニウス:オリュクス | 偶蹄 | - | - | - |
アエリアヌス:一角の馬、単角のロバ | - (単) | - | - | ○ |
アエリアヌス:サイ | - | 鼻先 | - | - |
インドロバ(とインド馬)とモノケロスの関係が意味不明になってきた。もしかして、一人でこんがらがってるだけ?
ひっかかるのは、アエリアヌスのカルタゾノスとプリニウスのモノケロスにある、「象のような脚」という部分。
そして、クテシアス、アリストテレス、プリニウスの言う「インドロバ」(通常、ユニコーンの起源とされているもの)がことごとく単蹄であると明記されているにもかかわらず、西欧のユニコーン絵画が必ず偶蹄のソレになっているという矛盾。