平凡社東洋文庫『ペルシア民俗誌』所収。
色々な逸話や伝承、迷信が大雑把に分類されてたくさん羅列されている。
p.127 「アール」 鼻が泥の女ジン。妊婦や赤子を襲撃する。
p.135 「ハムザード」 子供が生まれると一緒に出現するジン。一生行動をともにする。
p.137 「サーイエ」 「隠」。憑き物のようなジン。
〃 「魔物」 原語は「我々より良いもの」という意味。
p.159 「タンドロスターン」 「健康国」。魔物が集まるとされる山。ケルマーンにある。
p.160 病人の回復を祈るため「妖精の王の娘」にお願いする。黒い猫か鳩の姿で現われる。
p.171 「アズラエル」 早朝に犬が吠えるのは死の天使アズラエルを見たから。
p.172 「ナキールとモンカル」、「アンカルとモンカル」 審判の天使。
p.192 夜口笛を吹くとジンがくる。
p.193 神の名を唱えず熱湯や残り火を捨てると魔物の子供を傷つける。
〃 決まった日に鏡に映った自分の影の首がなければその人は年内に死ぬ。
p.194 「サタン」 正午にくる女乞食はサタンである。男の乞食は天使である。
〃 闇夜からの声はハムザードである。
〃 夜、暗い室内で「神の名に於いて」といわないとジンが現われる。
p.203 断食終了後も断食するとサタンが現われる。
〃 コーランを読んでいない時に開いておくとサタンが読む。
〃 人の行う良い行為を、天使は右肩に、悪い行為を左肩に書く。
p.204 空の鉄砲でも他人に向けない。サタンが撃つかも知れない。
p.205 地上に存在するものは海中にも存在する。
〃 話をしている時不意に沈黙が訪れると、それは地下を宝物が通っているか、死の天使エズラーイルが通っている。
p.208 「シェムル」 四ツ眼の犬。
p.221 口角の泡は、サタンがそこを攻撃しているあらわれである。
p.225 「エジュダハー」 エジュダハー(竜)の皮は火をつけたニンニクとタマネギの皮でしか燃やせない。
p.229 クルミの木の下で眠れば、ジンが現われる。
p.230 「マンドラゴラ」 人間のような植物。
p.231 「ザバーン・パス・ガファー」 親に勘当された娘。ヒエンソウという植物になった。
p.246 「ホマー」 伝説的な鳳。骨まで食べる。
p.254 黒猫はジンである。
p.255 象さんの鼻は長くなかった。
p.256 猿はもともと人間だった。
〃 熊はもともとパン焼きだった。
p.296以降の章は「神話」なので名称のみ紹介。
p.296 「大地の牛」
p.298 「流星」は悪魔。
〃 「ハールートとマールート」
〃 月は男で太陽は女。
〃 日食と月食は、竜がそれを噛むから。
p.299 「バフタク」 女夢魔。
〃 「グール」 吸血鬼。
〃 「サタン」
p.300 「革紐脚」
〃 「サグサール」 頭が犬の怪物。
p.301 「ハールートとマールート」
p.302 「ダッジャールのロバ」
p.303 「ナスナース」
p.305 「ヤージュージュとマージュージュ」
p.308 「エジュダハー」
p.310 「カクノス」 不死鳥。
〃 「アルース」 太陽を引く馬。
p.311 「サンショウウオ」=「サーマンダル」=「イラーン・アゴヴィールン」=「サラマンドラ」
〃 「ウージュ・ベン・アナク」 巨人。
〃 「スィーモルグ」
p.321以降は雑記事。
以上。私は、かなり多くの割合で本を図書館から借りてきて、使わないまま期限がきてしまうことがあるので、このように自分のためにもメモを作っておきました。
この本、その他にも色んな迷信が沢山で面白いです。
で、何気に面白いのが、ゾロアスターが聖人っぽく普通に扱われていること。それとヘダーヤトの意図は知らないけど、ゾロアスター教文献から頻繁に伝承が引用されていること。これは、当時の一般イラン人はイスラム教を信じつつもゾロアスター教神話や伝承を一部受け入れて何の支障もなく暮らしていた、ということでいいのでしょうか?
また、もう一つ。
キルギスの叙事詩からと関連して、上のほうに出産に関連する悪魔アールというのがありますよね。綴りがのっていなかったので正確なところは不明ですけど、もしĀluとかだったりしたら、これってアルバルスティやアルバスティ、アルバストルと同じ系譜になるのは間違いないっぽいです。また、アールがより古い形を留めているとすると、アッカドの妖怪アルー(Alû)とつながったりして。でも、「アル」って音的には単純なので単なる偶然の可能性も高いかもしれない。アルーって男性の妖怪だし(なお、女性版のリルーはリリスの語源だともされてる)。