『怪 0024』のヌリカベ記事

以前、朝日新聞に紹介されて話題になった江戸時代(19世紀初頭)のヌリカベの絵画。なぜ今頃話題になったかというと、アメリカのブリガムヤング大学に所蔵されていたものを川崎市民ミュージアム湯本豪一さんが(デジタル・データを?)見てヌリカベ(ぬ里化遍)という文字を発見したというのが経緯のようです。それと湯本さんの手元にもほとんど同じ絵巻があったというのもポイントが高かったらしい。ただし、こちらのほうには名称が書かれていなかったそうです。
その詳細が先日発売された妖怪雑誌『怪』24号に載っておりました。また、湯本さんに加えて報道した朝日新聞の加藤修さん、京極夏彦さん、多田克己さん、村上健司さん、とおなじみの妖怪研究家が対談をしてあれこれと推測をしています。
同じ絵巻に載っている妖怪たちは他にもいくつか類例がみえるのに(たとえば国書刊行会『妖怪図巻』にあるもの)、ヌリカベだけはそういうのが何もない。海辺に描かれているが、海どっぷりの妖怪というわけでもない。となると別系統の絵巻か、あるいはヴィジュアルイメージから画家が(余白に?)挿入したものではないか? とか。柳田國男-水木しげるのいう「ヌリカベ」との関係――名前が同じだけでぜんぜん違う性質の妖怪はけっこうあるわけで、そのあたりのことをいろいろ考えなくてはならない、とか。
それにしても対談のなかでは相変わらず京極さんの状況・仮説整理能力が際立っていて見事でした。

怪 vol.0024 (カドカワムック 267)

怪 vol.0024 (カドカワムック 267)