体内のムシの続き

イベントレポ「第52回日本印度学仏教学会」報告というページ(2001年7月 5日)に

『正法念処経』における rlung について
第5番目の発表は東洋大学東洋学研究所の石川美恵さんの「『正法念処経』における rlung について」という発表です。
(中略)
rlung ルンという言葉は「風」と訳されたり「気」と訳されたりしますが、『正法念処経』の中にこんなリストがあるなんてぜんぜん知りませんでした。ルンが乱れると身体の中の様々な部分がいろんな蟲に食い荒らされて変調するというチベット医学でよく聞く話の材料はこの辺りにあったのですね。

とある。
私はわけもわからないまま「80種の虫」というウェブページを書いていたのだが、なるほどこんな思想的背景があったとは。それに関する活字論文もあるようで(石川 美恵「『正法念処経』における「風」について チベット訳を中心として」)、読んでみたい。チベット医学でも虫がいると想定されていたのか。やっぱりインド起源なんだろうか、それともシナチベット語族系?

ところで私は80種の蟲にかまけてばかりいて、『正法念処経』の巻66にも蟲が何種類も載っていたのを見逃していた(これに気づいたのは、『ハラノムシ、笑う』にいくつか名前が出ていた蟲をぐぐったからである)。

復次修行者。内身循身觀。
有何等風住我身中。作何等業。彼以聞慧。或以天眼。
見有一風名曰集蟲。此集蟲風。遍身分中。能集能散。
閉塞上下。從頂至足。有十種蟲。一名頭行蟲。
二名骨行蟲。三名食髮蟲。四名耳行蟲。
五名鼻内蟲。六名脂内行蟲。七名節行蟲。
八名食涎蟲。九名食齒根蟲。十名歐吐蟲。
復有十蟲。在咽胸中。一名噉食蟲。
二名食涎蟲。三名消唾蟲。四名歐吐蟲。
五名十味流脈中行蟲。六名甜醉蟲。七名嗜味蟲。
八名抒氣蟲。九名憎味蟲。十名嗜唾蟲。

CBETAより。前後の巻65、67などにもある。
お経は読めないけど、体内に風があるとか、その一つの名が「集蟲風」で、体中をめぐっているとか書かれているようだ。そして十種の虫があり、名前が並べられている。実は原文にはもっとずらずら並んでいるけど、あまり並べすぎて漢文を読めないのがばれてしまうとまずいので、このあたりで切っておく。

三尸については次のような論文を発見。窪徳忠「日本に傳來した三尸信仰の一側面 : 三尸驅除法を中心として」。1956年だから古いしページ数も多いけど、十分に参考になりそうだ。