ロキ、プロメテウス、アジ・ダハーカ、アミラニ

 たまに、ギリシア神話のプロメテウスと北欧神話のロキを同一視する(もちろん、ある特定のレベルにおいて)のをみて、「どっちもトリックスターじゃん!」というのを見かけるのだが妙に納得がいかなかった。自分でそれっぽいのを並べてみる。
 プロメテウス→人類に火を与えた
 ロキ→火の神。だと言われていたが、微妙
 プロメテウス→人間に優しい
 ロキ→人間なんて知ったことか
 プロメテウス→オリンパュスの神々とは別の種族。巨人。
 ロキ→アース神族ではなく巨人の出。

 なんかぱっとしないな、と思っていたら一つ見っけ。

 プロメテウス→神々を出し抜く。
 ロキ→神々にちょっかいを出す。
 その後
 プロメテウス→岩に縛り付けられる。不死身の鷲に内臓をついばまれる。
 ロキ→岩に縛り付けられる。毒をたらされる。

 トリックスターも都合のよいことばっかりやってられないですね。神々の秩序を乱したからには、それが良いことであれ悪いことであれ、罰せられちゃうのです。

 助かる方法
 プロメテウス→不死身の鷲をヘラクレスが殺す。
 ロキ→いつのまにか抜け出す。そのときは世界の終わり。

 ロキのほうがよくわからないけど。そういえばイランの神話では、
 アジ・ダハーカ→英雄に倒され、デマーヴァンド山に縛り付けられる。
 アジ・ダハーカ→世界の終わりに、どういうわけか抜け出す。
 コーカサスの神話では、
 アミラニ→英雄。ちょっと暴れすぎて、神様に怒られる。
 アミラニ→巨大な杭につながれ、岩の下に閉じ込められる。
 アミラニ→忠犬が鎖をなめてはずそうとする。年一度、鍛冶屋が鍛えなおして元の木阿弥。
 プロメテウス→内臓は夜中に再生し、昼間に再び食べられる。
 ロキ→妻のシギュンが毒を皿にためる。でも捨てに行くとき、ロキの顔に直接毒が滴る。

 繰り返される苦痛・拷問。うーん、よくわからん。何かあるんだろうか?


 ふと気になって『世界神話大事典』のロキの項目を見てみると、
 「ロキとは、反テュール、反神なのではないか」
 としめくくられていた。余計わからんて(テュールは、複数形で神々)。