ゾロアスター教がわからん

ちょっと前にここにペルシア系の幻想動物について拡充しようと書きました。そこで今回は時代をさかのぼってゾロアスター教のアンラ・マンユやダエーワについて書いてみようと思い調べてみたのですが、、、

 どうも、今までゾロアスター教だと思っていたものは、実はかなり複雑だということが分かってきて

 ザラスシュトラが生きていたのは前1000年ごろ、そしてパフレヴィー語で、日本で知られているゾロアスター教神話が書かれたのがサーサーン朝末期。ついでに、いくつかの本でアフラ・マズダーの神話からつながってる『王書』は後950年ごろ。2000年の開きがあります。「事典概要」にも書きましたが、異なった伝承を複合して再構成することはいかがなものか?
 toroiaがこまってしまうのは、一般的なゾロアスター教の本やイラン神話の本では、このような流れがすべて物語として一つにまとめられてしまっていて、本来ある神話の一部がどの流れ(時代や文献や地域や宗派や言語や書き手の地位など)に属するのかを腑分けするのがとても難しくなってしまっていることです。そりゃあアヴェスター語やらパフレヴィー語やらを読めればいいんでしょうけど......。
 でも、これだけはいえるというのは、すべての時代にはその時代の神話があった、ということです。それをむやみに合成して自分の理想像を作ってはならないことです。

しかし、正直言って、自分でも何が問題かわからないというか何がわからないかわからないつー、最悪の状況になってます。まぁ以前はズルワーン主義が単なるゾロアスター教の異端だと思っていたから、それに比べれば良くはなってきたのかもしれない。

一応なんとなく思い描いている「流れ」のイメージは・・・

1.原アーリア人の時代(イランに記録なし、ミタンニが最古)
2.イラン人の宗教(ダエーワ崇拝、多神教
3.ザラスシュトラの改革(ダエーワ排斥、二元論的一神教、『ガーサー』)
4.アケメネス朝(マズダー教?=多神教一神教、『ヤシュト』)
5.ヘレニズム、ミトラス教、その他
6.サーサーン朝(ズルワーン教orマズダー教が国教、アヴェスター編纂、マニ教
7.アラブ人の侵略(『デーンカルド』『ブンダヒシュン』)
8.イスラム教化(『シャーナーメ』)

これら複数の流れがイラン(やアンラ・マンユ)の中を複雑に絡み合いながら、
誕生し、消滅し、衰退し、歓迎され、習合し、排斥され、流入し、流出し、
我々のいうイランの宗教というものが発展してきたわけです。

 とはいえ、表題にある通り、上にあるのはあくまで自分の中に思い描いているいい加減な知識に基づいたイメージだし、ある人はサーサーン朝の神学とザラスシュトラの神学はさして変わらないというし、ある人はズルワーン教ザラスシュトラより前にあったというし、ある人はダエーワ排斥はイラン全般の現象だというし、ある人はマズダー教とゾロアスター教は同義だというし、要するに百家争鳴の状態にある(ように見える)ので、toroiaごときがどれがどれなのか選別するのは畏れ多いです。

最後に、参考になればということで、今までに目を通してきたもの(必ずしも熟読できたわけじゃないというのが悲しい限界です)。
・伊藤義教『アヴェスター』(部分訳)
・伊藤義教『ペルシア文化渡来考』
・伊藤義教『ゾロアスター研究』(デーンカルドの一部)
・岡田明憲ゾロアスター教 神々への賛歌』(ヤシュトの一部)
・岡田明憲ゾロアスター教の悪魔払い』(ウィーデーウ・ダートの一部)
・岡田明憲ゾロアスターの神秘思想』
黒柳恒男ほか『世界の神話伝説総解説』
黒柳恒男訳『王書』(英雄時代を抄訳)
・岡田恵美子訳『王書』(歴史時代以外を抄訳)
・山本由美子『世界の歴史IV』
・山本由美子『世界神話事典』
バンヴェニスト、ニョリ『ゾロアスター教論考』
・ヴィカンデル『アーリヤの男性結社』
・コッテル『世界神話辞典』
・J.V.ほか『世界神話大事典』
デュメジル『大天使の誕生 デュメジル・コレクション』
デュメジル『神々の構造』
・タルデュー『マニ教
・ヨナス『グノーシスの宗教』
・A.J.ハーンサーリー『ペルシア民俗誌』(基本的にはあまり関係ない)
プルタルコス『エジプト神イシスとオシリスの伝説について』
エリアーデ世界宗教史2』(ちくま学芸文庫)

さらに悪魔学の本も少し参考にして今なお項目訂正中。
ただ、近代オカルティズムにおけるアーリマンを入れるかどうかは微妙なところ。