とんちんかんな翻訳は……

私がWikipediaで活動を始めてから2、3年くらい経ってると思うが、どうみても日本語になっていない翻訳記事*1を作る人というのは、おそらく限られている。私のフィールドは神話伝説というごく小さなものなのだけど、それでもここ2年間くらいに3人ほどそういう人を見つけた。ということはWikipedia全体で見ると恐ろしい数になるのだろうか。それとも神話伝説のような小さなフィールドの場合、単に自浄作用が働きにくいだけなのだろうか。
ところで3人のうち2人はほとんどexcite機械翻訳に頼っていたが、今日見つけた人は単に翻訳能力がないだけのようだった。
具体的にはスコットランドの妖精グラシュティグの記事、食人木の記事*2。それぞれのページ、左がもとの翻訳文、右が私が少し手を加えたもの。せっかく日本語になっているし、すべてまっさらから書き直すというのも失礼だからちぐはぐな印象を受けるが、それが集合知とかいうのを標榜するWikipediaなのだから仕方がない。
別に翻訳するのは自由だし、ほかの誰かが直してくれることもあるし、土台がなければ何も始まらない、というのは正論ではあるけど、せめてglaistigは日本語表記だとグラシュティグだとか、Governor of Michiganが「ミシガン州知事」だということぐらい分かれよ、とか、最低限の専門知識や常識的推論ぐらいはあってほしいとは思う。なんとなれば、Wikipediaは間違いを訂正できる人よりもずっと多くの一般人が間違ったままの記述を見て記憶し、(そして忘れて)去っていくのだから。
……下ばかり見てもしょうがない。次は「優れた翻訳」を探してみたいと思う。
あ、でも去年後半にものすごい勢いで英語版から翻訳された北欧神話関連の記事は、軒並み水準以上だった。
話は変わるけど北欧神話系の本といえばラーシュ・マーグナル・エーノクセンの『ルーン文字の世界』が少し前に出ていたけど、これは値段以上によくできた本だった(Amazonレビューにあるように、とくに前半)。それともうひとつ、去年12月に出版された八木茂樹の『歓待の精神史 北欧神話からフーコーレヴィナスの彼方へ』。私自身は本屋で数秒めくっただけでちゃんとは読んでないけど、けっこう神話分析が詳しくされてる感じがした。北欧神話から思想系に結びつくのってなかなか日本にはないような気がする。北欧神話関連サイトが取り上げてる様子はないけど、神話マニアにはこの本はどうなのだろう。

ルーン文字の世界―歴史・意味・解釈

ルーン文字の世界―歴史・意味・解釈

  • 作者: ラーシュ・マーグナルエーノクセン,Lars Magnar Enoksen,荒川明久
  • 出版社/メーカー: 国際語学社
  • 発売日: 2007/06
  • メディア: 単行本
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「歓待」の精神史 (講談社選書メチエ)

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*1:Wikipediaは、他言語版に完成された記事があれば、それを翻訳して新たな項目を作ってもいいのだ。

*2:この項目は面白そう。発展させられれば楽しい。