日本語のイタリック

 Wikipedia日本語版のなかで、とくに欧米語からの翻訳に多いのが日本語のイタリック(斜体)である。斜体とはこういうもの、と説明しなくてもわかるか。
イタリックというのは、例えば英語だと、本文中にad libiumとかa prioriのようにラテン語やフランス語などの成句を挿入するときとか、出版物等のタイトルを本文中に入れるときとか(たとえばFreud argued in Das Unheimliche that uncanny...)、タイトルそのものに適用するスタイルである。たとえタイトルや成句が通常文に挿入されても文法的に破綻しないようにするための一つの工夫であり、強調の一つの作法でもある。引用された文に使われることもある。
 しかるに日本語ではこういうときはカッコを使う。「荒川紘は東西文化の対立について『龍の起源』の中で……」。またはカタカナ書きにする。「アドリブ」「ア・プリオリ」。場合によっては次のように。「ナンジ死スベキモノニアラザレバ云々」。強調の場合は傍点、ゴシック体にするなど……。引用は字下げするなどによって処理される。
 日本語ではデザイン上の理由でもない限りイタリックを使うなどと言うことは不自然なのである(正確には日本語の斜体はオブリーク体というらしい)。そんなの本を読んでれば分かる(翻訳書の「凡例」をざっとながめてみるだけでもいい)。となると日本語にイタリックを使う人は日本語で書かれた本を読みなれていないか、そうでもなければ単なるグローバリゼーション礼賛か欧米かぶれだということになる。
本を読まないことの恐ろしさは、何よりもまず本を読まずに文字で表現できてしまう環境の登場によって、わかりやすく曝露されるのだろう。
ところでこのブログにも日本語イタリックを使っていた覚えがある。まずは自省……w