とはいうものの、竜生九子は

とはいうものの、竜生九子は早くて明の時代の「発明品」だということを考えると、下のエントリでひらめいた「アジア的リアリティ」は適用しにくいようなイメージがあるんだよなあ。
たとえば北西ヨーロッパの「グリーンマン」は1920年ごろ(だったと思う)にある民俗学者が「この装飾をグリーンマンと呼ぶことにする」と言い出しただけなのに、今やこのモチーフの名前として元始からそう呼ばれていたように紹介されてしまっている(このことに言及していない「グリーンマン」論は使い物にならない)。唯一「シルウァヌス」という銘がある事例があるものの、これは『黒い聖母と悪魔の謎』(講談社学術文庫版)が紹介するほどファンダメンタルな事例とは受け取られていないのが現状(偶発的事例、勘違い、作家一人の創作などの説が有力)。
竜生九子も、現状の資料や古代のアジア的リアリティをもつ幻獣(詳しくは杉浦康平の『アジアの宇宙観』や『宇宙を叩く』参照のこと)から考えてみると「文人の創作」か、それに近い類のようにしか思えないのだ。