クレーマーその2

神話学者・東ゆみこさんのブログのエントリ(1)「キャロル・ローズ」の巻—ヨーロッパ・キマイラ—

ただし、本を編集する際に、参考文献の順番を間違ったという可能性も否定できません。けれども、少なくとも、ローズの本の項目と参考文献が不一致であるという点は、間違いないようです。
って書かれているのは私が指摘したからです。私が見る限り、ローズ辞典には同様の編集ミスがいくつかあるようです(なぜ知っているかというと、以前、自分の知らない存在についてどの文献を多用しているか知りたくて、参考文献逆引きリストを作ったことがあるから……大変だった)。
165. Seebok, T. A., and F. J. Ingemann. "Studies in Cheremis: ...
(ついでにいうならSeebokは誤植。Sebeokが正しい)
の上に
164. Saggs, H. W. F. Civilization Before Greece and rome. ...
下には
166. Senior, Michael. The Illustrated Who's Who in Mythology. ...
とあり、おそらくは164のほうにキマイラについての情報があり、しかし数字がひとつずれてしまっていた、というのが真相なのではないか、と私は推測していますということをメールで送りました。でも、今考えると164『ギリシャローマ以前の文明』よりも166『図解神話紳士録』のほうにキマイラが載っている確率が高いかもしれない。というのも、本のタイトルもそうだけど、164のH.W.F. Saggsという人、ぐぐってみるとオリエンタリストだ、って紹介されてるんだもん。となると164は古代メソポタミア文明について書かれた本だと推測できるわけで。なら、せいぜいロバート・グレイヴズが「ヒッタイトと関係あるんじゃねーの?」とか電波飛ばしている以外にキマイラと古代メソポタミアとの関連はなさそうなので、166のほうに載っていると考えるのが妥当でしょう(……番号がひとつだけずれていれば、の話ですが)。
それはそれとして、東さんのおっしゃる「チェレミスの本を読んだことがないのに参考文献に付け加えたのではないか」という推測は、辞典本体にチェレミス本からの引用が沢山あるので、ハズレでしょう。

またもうひとつ、『神獣・モンスター』(実は、東さん宛メールに「幻獣」と書いてずっと間違えたままだった。これは失礼なことをしてしまった)のイラストがどうみても笹間良彦『世界未確認動物事典』のパクリなのを見つけて指摘すると、こちらはイラスト編集したほうへと転送され、すぐに訂正メールが来ました。

次回はボルヘスの『幻獣事典』を扱うのだそうです。いやー、クジャタやア・バオ・ア・クゥー、ペリュトンの件についてはだいぶお世話になったボルヘスさんのことですが、それ以外の新しい知見があるのかどうか。見物です。
ついでに言うと、フーコーが引用しているボルヘスのいう「中国の百科事典」、いわゆるエピステーメーの好例なのですが、ボルヘスの創作だという説が有力です。そのあたりのフォローもどう入れるのでしょうかねえ。